2012 Fiscal Year Research-status Report
ダイズ種子吸水過程における水浸透ダイナミクスを探る
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24658013
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
実山 豊 北海道大学, (連合)農学研究科(研究院), 講師 (90322841)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 耐湿性 / 種子 / 冠水害 / 発芽 / 吸水 / 受動 / 能動 / 微細構造 |
Research Abstract |
水田転換畑にて広く展開する国内のダイズ作にとって、播種直後に過湿土となる場合の湿害(種子冠水害)は、ダイズ減収を引き起こす大きな問題となっている。 前年度までに、北海道育成ダイズの2品種、ハヤヒカリ及びトヨムスメの乾燥調湿種子において、冠水害耐性の品種間差異を示すとともに、その差が、冠水害感受性であるトヨムスメでの過剰な受動吸水に関連している可能性を示唆し、この現象の原因が、受動的および能動的な種子の吸水動向と関係のある可能性も見出した。 前年度の結果を受けて、今年度は上記2品種のほか、いわいくろ、エンレイ、スズマル、ナカセンナリ、フクユタカ、Pekingを加え、全てで8品種の乾燥調湿種子を用い、種子冠水耐性とその吸水動向との関係性を精査した。その結果、種子冠水処理直後における2種類の吸水様態、受動吸水と能動吸水の各速度の比「受動吸水速度/能動吸水速度」値と、冠水処理後の種子の発芽率の間に、極めて密接な関係性が見出された。すなわち、能動吸水速度が小さいにも関わらず受動的な吸水が進行する品種には、冠水後に種子の発芽率が著しく低下する(種子冠水耐性が弱い)傾向が認められた。 種子の吸水動向を決める因子についても調査した。浸透ポテンシャル(種子内浸透濃度の多寡)及びマトリックスポテンシャル(種子内空隙率:密度の多寡)が吸水速度に関与しているとの証左は得られなかったが、受動吸水速度に関しては、種子の透水性との間に有意な関係性を見いだした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
24年度計画において記載した内容についてはおおよそをクリアし、25年度計画に記載した研究手法についても確立に至っている。本研究における大きな目的、ダイズ吸水時の水浸透のダイナミクスを説明するに至る知見は、順調に蓄積しており、おおむね順調な進展をみせていると評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
ダイズ吸水時の水浸透のダイナミクスのモチベーションたる形質が不明なので、そこを精査する方向性と、 前年度のハヤヒカリ及びトヨムスメにおいて、種子の吸水動向と種皮構造(アリューロン層直下に位置する種皮裏面の微細構造)との関連性を見出したが、多品種についても調査し、構造的な特徴が吸水に影響し得る一般的な形質なのかを精査したい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
その多くは、実験に使用する消耗品にあてられ、一部研究結果の公表に係る旅費および印刷費に用いる予定である。
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