2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24658023
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
古谷 勝則 千葉大学, 園芸学研究科, 准教授 (10238694)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山本 清龍 岩手大学, 農学部, 准教授 (50323473)
櫻庭 晶子 筑波技術大学, 学内共同利用施設等, 准教授 (10215692)
國井 洋一 東京農業大学, 地域環境科学部, 准教授 (10459711)
小林 昭裕 専修大学, 経済学部, 教授 (60170304)
上田 裕文 札幌市立大学, デザイン学部, 講師 (30552343)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 緑地 / 自然 / 都市 / 利用 / 体験 / 変遷 |
Research Abstract |
都市緑地は「生態系サービス」という自然の恵みをもたらしている。都市インフラとして良質な緑地整備を進めていくためには、生態系サービスを指標として、それを最大限活用するような緑地計画技術が望まれる。これまで、都市域の緑地評価では、緑被率や種数、樹木データや不透水面積など計測できるデータが利用されてきた。本研究では、4つの生態系サービス(基盤、供給、調節、文化)の中でも最も計測が難しいと言われている文化サービスに着目し、自然体験からみる都市域の緑地の利用と変遷を明らかにすることを目的とした。具体的には、次の4点を明らかにする。1.国内外の文化サービスの評価手法の整理、2.発展経緯の異なる都市の自然体験の違い、3.緑地の変遷と自然体験の変化、4.現在の緑地における世代別自然体験の特徴。 前述の研究目的でのべた研究を推進する。1.の目的では、国内外の複数の国を対象にして、風景評価や自然体験、自然体験制度について調査した。2.と3.の目的では、アンケート調査により世代別の自然体験を調査した。アンケートは配布式で、在住もしくは通勤・通学している人を対象とする。各世代の利用状況を把握する予定である。各都市での回収予定部数は200部である。なお、児童と70代以上の高齢者に対するアンケートは、調査の意図が伝わるように地図への自由回答式ではなく選択式のアンケートとし、対面式で聞き取りながら調査する。平成24年度に1ヶ所の論文を公表した。4.の目的では、1.から3.で得られた成果を基に自然と都市の関係を具体的な事例として、成果をまとめて印刷する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
国内外の生態系の持つ文化サービスの評価手法を整理した。特に、日本と韓国、日本とインドネシア、日本とロシアの風景評価の比較研究をすすめた。韓国には研究代表者の指導学生がソウル国立大学に短期留学し研究を進めた。インドネシアの研究では、ボゴール農科大学から博士前期課程の留学生を研究代表者が受け入れて研究を進めた。両研究の成果が、Japan Geoscience Union 2013大会の国際セッションにアブストラクト査読として採用された。ロシアの研究では研究分担者を中心に研究代表者、連携研究者が研究を進めてきた。これまでの研究成果をまとめて、Forest Policy and Economicsの査読論文として公表された。次に、チベットにおける自然体験の民族比較研究を推進した。チベットからの博士後期留学生を研究代表者が受け入れて研究をすすめた。この研究では4民族を対象に自然体験を比較する研究をすすめ、研究成果が、The 13th International Symposium of Landscape Architectural Korea, China and Japanの査読付き論文に採用された。オーストラリアにはエコツーリズムの認証制度があり、この制度の評価基準には、環境や自然への理解に関する項目があるので、参考に調査した。研究代表者の博士後期学生が2ヶ月ほど現地調査をした。その結果、オーストラリアエコツーリズム認証商品の取得年別分布と宿泊施設の立地環境についてまとめ、ランドスケープ研究の査読論文に採用された。 次に、自然体験と緑地変化の研究について説明する。練馬区の調査を先行させて試験的に調査した。この結果、東京都練馬区石神井台地区における自然体験からみる緑地の利用と変遷を明らかにすることができた。研究成果が、ランドスケープ研究の査読論文に採用された。
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Strategy for Future Research Activity |
国内外の生態系の持つ文化サービスの評価手法の整理を続ける。研究分担者が、オーストラリアと日本の風景スケッチ(心象風景)の比較研究を予定している。また、韓国のソウル国立大学とインドネシアのボゴール農科大学へ指導学生が短期留学するので、前年度の研究を継続する予定である。中国重慶大学の講師が、2013年3月に一月ほど来日し、研究代表者と研究討議を進めた。その結果、重慶市においても自然体験の調査を進める可能性がある。指導学生が半年間(2013年9月まで)、ニュージーランドへ留学しているので、ニュージーランドと日本の風景比較研究も進める可能性がある。 自然体験と緑地変化の研究について事例研究をすすめる。研究代表者が先行して実施した練馬区の研究を参考にして、自然体験からみる緑地の利用と変遷を明らかにする予定である。現在、国内調査では、練馬区の追加調査と、江戸川区の水辺の自然体験を実施予定である。他に、共同研究者が、盛岡市、川口市、川崎市で調査を予定している。海外の自然体験調査では、青海民族大学の共同研究が進んでおり、チベットでは4民族(モンゴル族、チベット族、回族、漢族)の市民を対象に、緑地の変遷と自然体験の関係を調査予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
海外分の研究は大幅に推進したが、国内分の調査が1カ所のみであり、一部研究費を次年度に繰り越して使用することとなった。国内外の都市域における生態系の持つ文化サービスの評価手法整理では、主に、アンケート調査費用及び、海外における資料収集費用にあてる。また、自然体験からみる緑地の利用と変遷を明らかにする研究を進める予定である。緑地の変遷には、古地図、郷土資料などの購入が必要である。また、アンケート調査には、印刷費や郵送費、作業謝金などがみこまれる。
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