2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24658030
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
宇野 雄一 神戸大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (90304120)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鶴田 宏樹 神戸大学, 学内共同利用施設等, 准教授 (20346282)
奈邉 健 京都薬科大学, 薬学部, 准教授 (40228078)
新田 陽子 兵庫県立大学, 環境人間学部, 助教 (70403318)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | イチゴ / 口腔アレルギー症候群 / バラ科果樹 / シラカバ花粉症 |
Research Abstract |
イチゴにより口腔アレルギー症候群(Oral Allergy Syndrome; OAS)を呈する有症者がいる。OASは健康維持の阻害や症状の重症化を招くと同時に、生産物の消費低迷をもたらす。これを回避するためには、品種選抜や栽培方法の改良が必要である。本研究では、その第1段階として、イチゴのOAS誘発性評価法の確立を目指している。平成24年度は次の5項目について研究を実施し、イチゴのメジャーアレルゲンと抗アレルギー成分に関する基礎的知見を得た。 (1)イチゴの栽培とストレス処理:NaCl処理を行ったイチゴ株から、果実(果托および痩果)を収穫し、収集した他の品種の果実も含め、すべてID化して凍結保存した。 (2)Fra a 1遺伝子の発現レベルの評価:リアルタイムPCRにより解析した結果、Fra a 1遺伝子の相対発現量には品種間差が存在した。また、野生種のF. vescaのEST情報を調査した結果、塩ストレス下でのFra a 1 a2の発現頻度が高かった。 (3)Fra a1タンパク質の解析:大腸菌内で作成した6xHis::Fra a 1融合タンパク質をモルモットに免役し、抗血清を得た。イムノブロットにより調査したFra a 1蓄積量には品種間差があり、遺伝子の発現量と類似していた。また、同タンパク質の真空紫外円二色性(VUVCD)スペクトルを測定した結果、加温後の冷却による二次構造の変化が認められた。 (4)イチゴの抗アレルギー成分の評価:果実の粗抽出液によるヒスチジンデカルボキシラーゼ活性阻害試験を行った結果、品種ごとの阻害率に有意差が存在した。 (5)シラカバ花粉感作によるイチゴOAS動物実験モデルの開発:シラカバ花粉抗原(Bet V 1)とイチゴ果実抗原(Fra a 1)との交差性について、モルモットにおける受身皮膚アナフィラキシー反応を検討しており、実験継続中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実施計画では、イチゴ株に対してストレス処理を行い、収穫した果実を使用して分析を行う予定であった。充分なサンプル数を確保するために継続して収穫を行っており、作業工程の都合で分析は延期している。その一方で、2年目以降に計画していた品種間差の試験を一部繰り上げて行った。さらに、当初の計画にはなかったが、真空紫外円二色性(VUVCD)分散計を用い、Fra a1タンパク質のVUVCDスペクトルを測定することができた。その他の内容については、ほぼ計画通りに進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は次の5項目について研究を実施し、前年度に得たイチゴのメジャーアレルゲンと抗アレルギー成分に関する基礎的知見をさらに深めるとともに、イチゴのOAS誘発性評価法を検討したい。 (1)イチゴの栽培とストレス処理:ストレス処理を行った果実の収穫と多品種の収集を継続する。 (2)Fra a1遺伝子の発現レベルの評価:前年度に引き続き、Fra a1遺伝子の相対発現量を調査し、ストレス応答性および品種間差を調査する。 (3Fra a1タンパク質の解析:前年度に作成した抗Fra a1モルモット血清によるイムノブロットのサンプル数を増加させ、遺伝子発現と翻訳産物の発現との相関性を調査する。 (4)イチゴの抗アレルギー成分の評価:前年度と同様にして、粗抽出液によるヒスチジンデカルボキシラーゼ活性阻害率を算出し、各処理または各品種による差を比較する。 (5)シラカバ花粉感作によるイチゴOAS動物実験モデルの開発:継続中のPCA反応の検討の結果、交差性が認められたならば、シラカバ花粉を用いてモルモットに感作させる。感作したモルモットの口腔粘膜に交差性のあるイチゴ由来エキスを適用することにより、PFS(Pollen-food allergy syndrome)モデルの確立を試みる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
大別して次の3項目を使用することを計画している。 (1)試薬と消耗品:評価試験法の確立を行うため、チューブやシャーレなどの消耗品、クローニング・シーケンス用試薬・発現解析用試薬・タンパク質精製用試薬、イチゴの栽培試験のための栽培用品、および動物実験のための実験用動物および飼育用飼料にかかる費用などをそれぞれ計上した。 (2)旅費:園芸学会、国際イチゴ会議などへの出席を予定しており、情報収集と研究成果発表を行うための旅費を計上した。また、3つの大学のチームで研究を行うため、研究打ち合わせのための旅費も含まれている。 (3)その他:本研究の成果を学術雑誌に投稿すること、および最終年の科研報告書の作成のために必要な金額を計上した。
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Research Products
(7 results)