2012 Fiscal Year Research-status Report
メリステム形成制御に関わるペプチドホルモンの園芸的利用の可能性を探る
Project/Area Number |
24658032
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
|
Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
鉄村 琢哉 宮崎大学, 農学部, 教授 (00227498)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
冨永 るみ 宮崎大学, IR推進機構, 助教 (20373334)
澤 進一郎 熊本大学, 自然科学研究科, 教授 (00315748)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | 園芸学 / メリステム / ペプチドホルモン / 果樹 / 組織培養 |
Research Abstract |
植物ペプチドホルモンに関する基礎的研究は、近年めざましい発展を遂げているものの、実用化を目指した本格的な実験は行われておらず、本研究はその実用化を最終目的としているものである。発見されている15以上の植物ペプチドホルモンの中から、分裂組織(メリステム)の形成制御に関わるものをピックアップし、外生処理による効果が安定して現れやすい組織培養系を利用した実験を中心に行う。一方、基礎データを得る目的でゲノム解読の終わっているブドウ培養個体に処理を行い、遺伝子の発現等を調査し、第一人者のアドバイスを受けながら実験を進め、実用化の手がかりを得る。 茎頂メリステムの形成制御に関わるCLV3をin vitroの果樹培養体に外生処理することによりその反応を調査しようとしたが、総合アドバイザーよりCLV3よりもCLE25の方が活性が高いという情報を得て、実際にはCLE25を処理した。まず濃度を100nMとして、培養体に外生的に処理(培地添加あるいは直接滴下)した。芽に滴下すると枯れるものが多く、一方、カルス培養では変化がなかった。よって、濃度を1μMとし、カルスからの不定芽分化に及ぼす影響を調査した。しかし、無処理区と比較してもカルスに外見上の変化は見られなかった。 一方、ペプチドホルモン関連遺伝子の探索を、ブドウ‘ピノ・ノワール’を用いてを行ったところ、5つのCLV3オーソログ遺伝子が見つかり、そのうちの4つがCLEドメインを持っていた。これらの遺伝子はブドウ培養体のほとんどすべての組織で発現していたが、根で強く発現するものと茎で強く発現するものの2グループに分類でき、ブドウにおけるCLV3様ペプチドが異なる役割で植物体内で働いているものと推察された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
果樹の組織培養ではどのような濃度で影響を及ぼすのか全くわからなかったため、無処理区と比較しながら実験を行ったが、シロイヌナズナと同レベルの濃度で茎頂に影響を及ぼすことがわかり、その後の実験の展開に役立つことができた。しかし、主目的の一つであるカルスからの不定芽分化については全く影響が見られなかったため、今後、実験方針を転換する必要が出てきた。一方、ブドウにおけるペプチドホルモン関連遺伝子の探索については新たな知見が得られ、今後の研究の進展が期待される。
|
Strategy for Future Research Activity |
ペプチドホルモンはカルスの成長や不定芽分化には影響が無いと思われ、茎頂においては100nMで悪影響を及ぼすことがわかったので、今後は根端分裂組織に及ぼす影響について調査を行う。具体的にはカキのミクロ挿し穂における発根培地にCLE25を添加し、発根および根の成長に及ぼす影響を調査する。カキの場合、品種によっては発根する本数が1~2本と少ない上、発生した根は側根を作らず、根系を発達させないまま伸長するため、根端分裂組織から供給されるサイトカイニン量が少なく発根後のミクロ挿し穂の成長は劣り植物体を得ることができない。CLE25を適切に処理すれば、発生した根が分岐しながら伸長する可能性があると思われる。また、CLV以外のペプチドホルモン(RGFやストマジェン)が組織培養に利用可能かどうか調査する。 一方、ブドウにおけるペプチドホルモン関連遺伝子の探索についてはCLV3以外のペプチドホルモンについて探索を行う。また、ペプチドホルモン処理によるブドウ培養体への影響を、表現型観察及び下流候補遺伝子(WUS, CLV1, CLV2オーソログ)発現解析により明らかにする。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
引き続きペプチドホルモンの購入およびガラス器具などの実験機材の購入が中心になる。今までメールにより研究者間で情報交換を行ってきたが、必要であれば直接、打ち合わせする可能性もあり、その場合は旅費が必要になる。また学会発表を行うための旅費も必要である。
|