2013 Fiscal Year Annual Research Report
カイコの変異体を用いた動物の小胞輸送システムの解明と創薬モデルへの展開
Project/Area Number |
24658048
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
嶋田 透 東京大学, 農学生命科学研究科, 教授 (20202111)
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Keywords | 油蚕 / 尿酸顆粒 / トランスポーター / BLOC複合体 |
Research Abstract |
カイコ幼虫の真皮細胞には尿酸塩が結晶化して顆粒を形成し、皮膚が白色となる。近年の研究により、カイコ真皮の尿酸顆粒は、真核細胞に共通する「小胞輸送」の機構を介して生成することが示されている。一方、カイコの突然変異体のなかには、幼虫皮膚が白くならず透明になる系統が多数存在し、それらは油蚕と総称される。ヒトや哺乳類では、小胞輸送の異常による疾患が多く知られているが、小胞輸送を標的にした創薬は進んでいない。カイコでは尿酸顆粒の形成を指標にして病態モデルを構築できる可能性がある。そこで、本研究では、油蚕の原因遺伝子の単離、RNAiによる遺伝子ノックダウンによる油蚕形質の誘導、および小胞輸送を撹乱する薬剤による油蚕のフェノコピー作成、の3つの手法によって、尿酸顆粒形成の分子機構を解明するとともに、それを制御する手法の開発を試みた。 ポジショナルクローニングにより、突然変異「ヴァル斑油(ov)」の原因遺伝子は、ディスビンディンをコードするBmdysbであることが判明した。これら油蚕では、Bmdysb の転写量が顕著に低下していた。ディスビンディンはLRO(Lysosome-related organelles)の生成に必要な複合体BLOC1のサブユニットである。また、別の油蚕変異体「B8斑油(obt)」および「t-斑油(otm)」の原因遺伝子も、BLOC1のサブユニットをコードしていた。BLOC1のサブユニットが欠けてると尿酸顆粒の形成が不完全になり、油蚕形質が現れると考察される。さらに、BLOC1以外にも、やはりLROの形成に関与するBLOC3やAP-3のサブユニットも、尿酸顆粒の形成に必要であることが分かった。なぜなら、それらのサブユニットのmRNAをRNAiでノックダウンすると、油蚕形質が現れたからである。 一方で、小胞輸送を標的にする化合物であるブレフェルディンAをカイコ幼虫に与える実験を行ったが、いまのところ明らかな形質の変化は観察されない。より多くの薬剤を試してみる必要がある。
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