2012 Fiscal Year Research-status Report
トノサマバッタはなぜオオムギを食べない?植食者の寄主と非寄主を決定する要因の探索
Project/Area Number |
24658054
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
徳田 誠 佐賀大学, 農学部, 准教授 (60469848)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 誠二 独立行政法人農業生物資源研究所, その他部局等, 研究員 (50370664)
川浦 香奈子 横浜市立大学, 木原生物研究所, 助教 (60381935)
軸丸 裕介 帝京大学, 理工学部, 研究員 (90442970)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 異種染色体導入コムギ / オオムギ / コムギ / トノサマバッタ / 虫害抵抗性 / 寄主特異性 |
Research Abstract |
トノサマバッタやサバクトビバッタは、発育時の密度に依存して体型や体色、行動などを連続的に変化させる相変異という現象を示す。この密度依存的な多型現象は、バッタ類の大発生と密接に関連していると考えられ、本種の防除を考える上で重要な要素である。とりわけトノサマバッタは、アジア地域でしばしば大発生し、農作物に甚大な被害を及ぼす潜在的重要害虫である。 本研究では、イネやコムギ、ソルガムなど、様々なイネ科植物を摂食するがオオムギは摂食しないというトノサマバッタの寄主特異性に着目し、オオムギ染色体を1対ずつ導入したコムギ系統を用いてトノサマバッタの行動や寄主選好性および受容性、そして生存率や発育期間に影響を及ぼすオオムギ側の要因を、物質および遺伝子レベルで解明することを目的として研究に取り組んだ。 ふ化後の様々な時期から与える餌をオオムギに切り替えて飼育し、コムギのみを与え続けた場合と生存率などを比較した結果、早い時期からオオムギを与えるほどトノサマバッタの生存に及ぼす影響が大きいことが判明した。南西諸島産の3系統のバッタでオオムギに対する感受性を比較した結果、沖縄島由来のアルビノ系統や南大東島系統よりも、下地島系統の方がオオムギを与えた際の生存率が高かった。各系統の群生相と孤独相より得られたふ化幼虫で比較した結果、いずれの系統でも、孤独相よりも群生相の方がオオムギを与えた際の生存率が高い傾向が見られた。以上より、トノサマバッタのオオムギに対する感受性は系統間で異なり、発育の早い段階ほど高く、孤独相の方が高いと考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
概ね当初の計画通りに研究を実施した。一部の実験科目に関しては、当初の予定以上に解析が進み、予算の前倒し申請をして実施した。研究分担者1名が、科研費応募資格を喪失したため、平成25年2月28日付で分担者を辞退したものの、初年度に確立された解析手法を研究代表者が引き継ぐことにより予定通りの研究が実施可能な見込みである。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画通り、オオムギの遺伝的要因がトノサマバッタの相変異形質と繁殖形質に及ぼす影響を明らかにするとともに、引き続き、オオムギに含まれるトノサマバッタ抵抗性遺伝子の探索およびトノサマバッタの摂食や発育に影響を与えるオオムギ二次代謝産物の解析を進める。トノサマバッタでは、幼虫期を低密度条件で過ごしたバッタは孤独相、高密度条件で過ごしたバッタは群生相と呼ばれ、両者は形態的にも生理的にも大きく異なる。したがって、異なる密度で飼育した各相のバッタに初年度と同様の実験を実施する。当該年度中に、一連の成果を取りまとめ、学術雑誌への投稿を目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
科研費応募資格の喪失に伴い、分担者1名が平成24年2月28日付で辞退したため、当該研究課題は代表者が引き継いで実施する。それぞれの専門分野の研究機関が参画して研究を実施しているため、当該課題に必要な設備備品類はすべて揃っており、購入予定はない。 当初の計画通り、バッタの飼育および実験とコムギの栽培にかかる消耗品代、遺伝子解析や生化学分析に必要な消耗品や試薬の経費、代表者および分担者が研究成果発表のために国内の学会大会に参加するための旅費と滞在費、累代飼育昆虫の飼育や実験に携わる補助者の人件費に使用する計画である。
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Research Products
(9 results)