2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24658059
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
三輪 京子 北海道大学, 創成研究機構, 特任助教 (50570587)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | シロイヌナズナ / ホウ素 / トランスポーター / 変異株 / 要求量 |
Research Abstract |
今後の食糧・植物バイオマスの持続的な増産には、肥沃度の低い土壌環境で少ない肥料投入で高生産する植物の開発が必要である。これまで、低ミネラル環境に耐性を付与する遺伝子は複数同定されているが、植物個体の生育量に対する必須元素の要求量を低下させた例はない。 本研究では、植物の微量必須元素のホウ素を対象に、植物個体のホウ素要求量を低下させる新規遺伝子の同定と解析を目指した。そこで、対照株がホウ素欠乏のために生育抑制を示す低ホウ素栄養条件において、生育抑制が緩和された変異株を新たに単離し、原因遺伝子の同定とその詳細な解析を行うことを研究の目的とした。 平成24年にはシロイヌナズナホウ素ホウ素輸送体機能欠損株bor1-1に塩基置換を誘発するEMS処理を行い、1万9000のM1種子からM2種子を獲得した。変異株探索のため、ロックウールを用いて低ホウ素栄養条件で1万8000のM2種子を水耕栽培した。この一次スクリーニングの結果、対照株と比較してホウ素欠乏による葉の展開抑制の緩和を示した株が約100株得られた。二次スクリーニングとしてM3種子が取得できた72株を対象に、ロックウールを用いた水耕栽培と固形培地でのホウ素栄養に依存した生育を観察した。その結果、7株が対照株と比較して低ホウ素栄養条件での葉の展開抑制の緩和を示し、ホウ素通常条件での生育に違いは認められなかった。また、原因遺伝子がどの染色体に座上しているかを調べる遺伝子マッピングを進めるため、Landsberg erecta とbor1-1の交配を進めた。単離されたホウ素欠乏症状が緩和された新規変異株の変異の原因遺伝子はホウ素の利用・感知に関わるものと考察され、ホウ素要求量を低下させる遺伝子の同定につながると期待された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画していた変異株スクリーニングを実施した結果、対照株と比較してホウ素欠乏症状が緩和されたシロイヌナズナ変異株候補が実際に7株単離された。これらの変異株は独立なM2集団から単離されたものであり、欠乏症状の緩和の程度や様子は大きく異なって観察され、独立な変異株であることが期待され、研究目的に合致した複数の植物材料の取得が達成された。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度の研究により、実際に低ホウ素栄養条件において生育抑制が緩和された変異株が単離できることが明らかになった。そこで、ホウ素栄養条件を変化させた条件での変異株探索をさらに展開し、新たな変異株候補を探索する。 また、単離された変異株の種子を大量に取得するのに通常よりも時間を要したため、計画していた葉のホウ素濃度を測定の実験の実施に至らなかった。今後、葉のホウ素濃度の測定の実験を実施することにより、欠乏症緩和の原因がホウ素の輸送にあるのか、要求性にあるのかを区別し、変異株をグループ分けする。対照株と同様のホウ素濃度を示しながらも生育が改善している、ホウ素の要求量が低下した変異株を優先して解析を進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究費は主に変異株の原因遺伝子同定のための遺伝子配列解析と、変異株の生理学・生化学的な解析の費用として使用する。 平成24年度に引き続き変異株の探索と、得られた変異株を対象に遺伝子マッピングを実施し、変異の原因遺伝子の同定を進める。変異の原因遺伝子の候補を絞りこむため次世代配列解析を行い、変異の原因遺伝子であることを遺伝学的に証明するために、相補実験や変異株アリルの取得をする。 また、単離された変異株を対象として、対照株よりもホウ素要求量が低下している原因を明らかにするため、変異株の生理解析を(1)ホウ素輸送・転流、(2)他の元素濃度、(3)ホウ素の作用点である細胞壁、の三点について生理学・生化学的な解析を進める。
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