2012 Fiscal Year Research-status Report
ナノ銀粒子の原子レベルの局所構造解析に基づく植物・小動物への移行特性の本質的理解
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24658062
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
橋本 洋平 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (80436899)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
光延 聖 静岡県立大学, 環境科学研究所, 助教 (70537951)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | ナノマテリアル / 土壌汚染 / 銀 |
Research Abstract |
日用品に含まれるナノ銀は,洗濯や入浴などの日常生活で容易に溶出して下水に流出することが確認されている.銀化合物全般については,ナノ粒子に限らず土壌中での挙動や生物毒性がほとんど明らかにされていない.そのため,製造されたナノ銀が環境中に放出され,土壌や水系での挙動と運命,それらの生物・生態系への影響という一連の過程での網羅的な研究が必要であるが,特に出発点である土壌でのナノ銀の挙動解明と毒性評価が最も重要な課題である. 今年度は,酸化ならびに湛水条件下の土壌中のナノ銀の化学形態を明らかにすることを目的とした.ナノ粒子で与えられる銀(Ag0)と,化合物から溶解して与えられる銀イオン(Ag+)の土壌での挙動を区別して明らかにする.土壌にナノ銀(平均粒径50µm)を添加し,酸化および還元(湛水状態)で一定期間インキュベーションし,その後の土壌試料中の銀の化学状態の変化を分析した.添加濃度は,試験的に500 mg kg-1とした.対象実験として,ナノ銀ではない硝酸銀溶液を添加し,同様のインキュベーション試験を実施する. 放射光X線分析の結果,土壌中の銀の酸化状態や化学状態の同定が可能であると考えられた.ただし,銀の酸化鉄ならびに酸化マンガン吸着体のスペクトルの形状が類似していたことから、土壌中の銀についてこれらの化学種を判別することは難しいと思われる. 一方,土壌に添加したナノ銀粒子は,そのほとんどが一定期間後も酸化や還元の影響を受けずに,ゼロ価の銀(Ag0)として存在していることがXANESスペクトルの形状から確認できた.土壌に添加したナノ銀粒子のEXAFSスペクトルは,ナノ銀の標準試料と完全には一致しなかったことから,一部のナノ銀粒子は、溶出して土壌コロイドに吸着している可能性が示唆された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定されていた実験を実施し,順調に分析が終えて成果が得られた.初年度は問題が生じることなく順調に終えた.引き続き鋭意取り組み,論文投稿を目指す.
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Strategy for Future Research Activity |
新たに実験を開始して,銀とナノ銀を添加した土壌の酸化還元電位,銀の溶出挙動,生物毒性を評価していく.学会発表を行い,成果を論文として発表することを計画している.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
実験装置の作成,ならびに機器分析にかかる消耗品の支出を中心に充てる.土壌採取のための旅費についても支出を計画している.24年度の繰り越し分は,主に実験装置の作成費などに充てる.
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