2013 Fiscal Year Research-status Report
土壌中の亜酸化窒素還元酵素群の「活性メタプロテオーム」解析
Project/Area Number |
24658063
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
横山 和平 山口大学, 農学部, 教授 (10230658)
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Keywords | 亜酸化窒素還元酵素 / 土壌 / 脱窒菌 / 活性染色 / メタボローム |
Research Abstract |
純粋培養菌体から得たペリプラズムタンパク質画分を、既成ゲルを用いた二次元Native PAGE(等電点電気泳動/Native PAGE)の後、これまで通りの条件で活栓染色法に供試しても、活性亜酸化窒素還元酵素(以下、N2OR)のバンドが得られなかった。このため、既成の一次元目用ゲル含まれる各成分について検討したところ、チオ尿素がN2ORを阻害することを見出した。以後、チオ尿素を含まない等電点電気泳動用のゲルを自作することとした。 未変性の粗タンパク質を一次元目の等電点電気泳動に供試すると、一部のタンパク質がゲル中で等電点沈殿し、二次元目のNative PAGEゲルに移動しない現象が見られた。特に、中性付近から弱アルカリ性pI領域では顕著だった。この課題を解決するために、等電点電気泳動後の固定・洗浄条件および二次元Native PAGEの泳動条件を種々検討したが、活性染色によるN2ORのスポットは得られていない。 水田あるいは畑土壌に牛糞堆肥を添加して嫌気条件で培養し、N2OR活性の高い土壌を調製した。これら土壌を0.1Mピロリン酸ナトリウムで洗浄後、細菌菌体を0.1%DNA含有Tris-EDTA緩衝液で抽出し、ヒスコトロンで破砕して得た抽出液を分子量分画して粗タンパク質溶液を得た。Native PAGE/活性染色に供試したが、活性のあるバンドは得られず、クマシー染色後もタンパク質スポットは検出されなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
二次元Native PAGE法:既成ゲル中のチオ尿素は、N2ORを阻害するため、ゲルを自作した。自作一次元目ゲルのpH分布については、等電点電気泳動用タンパク質マーカーを泳動して確認した。等電点沈殿の解消に向けて、タンパク質の陰電価を誘起する目的で、二次元目電気泳動にアルカリ性緩衝液系を用いたところ、一定の効果が認められた。また、Triton X-100はN2ORを失活させずに沈殿を溶解することが期待できることを見出した。これらの試験を複数回行ったために時間を要した。二次元Native電気泳動と活性染色を組み合わせる方法は、未完成ではあるが、重要な問題点を解決しつつある。 土壌タンパク質の抽出法:当大学内畑及び水田から得た土壌に牛糞堆肥を加え3週間程度嫌気培養してN2OR活性が顕著に発現していることを確認後、タンパク質抽出に供した。試行した間接抽出法は、事前の腐植物質の洗浄と多価陽イオンのマスキングのためのピロリン酸ナトリウム溶液処理と、1%DNA(吸着座のマスキング)および0.1M EDTA(金属プロテアーゼ阻害)を含むトリス緩衝液中での細胞破砕から成るが、Native PAGE/活性染色したがスポットが得られなかった。腐植物質によるNative PAGEゲル状のスメアは極めて薄く、洗浄の効果が認められたが、細菌菌体の損失の危険性があった。二次元Native PAGEの条件確立に時間を費やしたため、土壌からの抽出操作の改良ができていない。
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Strategy for Future Research Activity |
二次元Native PAGE/活性染色条件の検討:一次元目の電気泳動時の等電点沈殿を抑制することを目的として、未変性タンパク質ロード時に数段階の濃度の還元剤を添加し、異種タンパク質間のランダムな架橋を抑制する。活性染色時の亜二チオン酸塩より弱い還元剤であればN2OR内部の-S-S-結合を切断することはないと予想している。一次元目ゲルから二次元目ゲルへの移行を向上させることに関しては、①等電点電気泳動後のゲル洗浄液に界面活性剤を添加することと、②高pHの緩衝液系で泳動することを試みる。この方法で一定の改善がみられることを予備的に確認している。 土壌からのタンパク質抽出法の検討:25年度の方法では、ピロリン酸ナトリウムによる洗浄が、バクテリア菌体の損失につながる危険性があった。26年度には、ビーズビーテイングによる物理的破壊操作を導入する。これに合わせ、多価金属イオンをマスクし、なおかつ腐植物質の遊離を抑制するために、中性リン酸緩衝液系を用い、土壌粒子への遊離タンパク質の再吸着を拮抗的に防ぐためにDNAを、また、金属プロテアーゼを阻害するために低濃度のEDTAを添加する予定である。一般的なSDS-PAGEによって土壌からのタンパク質の抽出効率を確認後、N2ORの抽出を別途行う。
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