2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24658075
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
粟冠 和郎 三重大学, 生物資源学研究科, 教授 (20154031)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
粟冠 真紀子 三重大学, 生物資源学研究科, 学術研究員 (00422882)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 堆肥 / 菌叢 / 古細菌 / キシラナーゼ / 遺伝子資源 / 細胞壁分解酵素 |
Research Abstract |
研究実施対象は、近畿環境サービス(株)環境ワクチンセンター名張(三重県名張市)のコンポスト化施設とした。堆肥化は、縦横数メートルの区画に排水処理施設汚泥を中心とする有機性廃棄物を3m以上の高さに積み上げ、最下部から強制通気して好気的条件を保つことにより行われている。45日ほどで堆肥化は終了するがその間に約1週間ごとに切り返しを行う。堆肥化過程における熱変動を調べるために熱電対を用いた。3mの竹竿に約25cm間隔で熱電対を固定化した地温棒を2本準備して、堆肥切り返し直後に堆肥に垂直に挿入して、2カ所の縦方向の温度情報をデータロガーで記録した。堆肥化開始後23日目に切り返した直後の温度は、表面からの深さ50~250cmの範囲でほぼ70℃と均一あったが、その後、最高温度は日を追って上昇し、それを記録した地点は、下から上へ上昇したが、深さ200cm以下の地点の温度は逆に低下した。切り返し時に、試料を採取し、37℃~80℃で生菌数を測定した。その結果、深さ225cm(約60℃)の試料では、37℃と60℃の培養条件において生菌数の計数が可能であったが、深さ25cm(約90℃)の試料では、コロニーが生じなかった。古細菌の16S rRNA遺伝子を増幅するためのプライマーを用いてPCRを行ったが、特異的な増幅DNA断片は得られなかった。また、糖質分解酵素ファミリー10のキシラナーゼ遺伝子検出用プライマーを用いてPCRを行ったところ、増幅断片が得られた。この断片をクローン化し、塩基配列を決定したところ、Thermobacillus compostiゲノム中に見いだされたキシラナーゼと予想された遺伝子と高い相同性が得られた。また、リパーゼ生産菌と細菌細胞壁分解性好熱性細菌を分離できたことから、好熱性酵素の遺伝子資源としての有用性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請書において、平成24年度の研究計画として、1.堆肥の温度測定、2.分子生態学的手法による微生物叢解析、3.好気性超好熱菌の分離培養、4.好熱性酵素遺伝子の単離を掲げた。「堆肥の温度測定」については、研究実績の概要に記載したように、熱電対を用いて地温棒を作製し、堆肥への埋設方法を種々検討し最終的に堆肥の熱変動を正確に測定できるシステムを試行錯誤の末に構築した。その結果、堆肥の温度が92℃以上にまで上がることを見いだした。微生物自身が発生する熱により、そこまで高温になるというのは驚くべきことである。「分子生態学的手法による微生物叢解析」については、堆肥からDNAを抽出・クローン化・塩基配列の決定することにより、そこに存在する細菌の菌叢について情報を得ている。「好気性超好熱菌の分離培養」については、ゲランガムを寒天に変わる固化剤として使用することにより平板培地を作製し、プラスチック製の密閉容器中で培養することにより平板培地が過度に乾燥することを防ぎつつ、培養する手法を考案した。この方法により、80℃で生育する3種類の菌の単離に成功した。これらの菌の16S rRNA遺伝子の塩基配列を決定したところ、それぞれCalditerricola属およびThermaerobacter 族細菌の塩基配列と類似しており、高温性堆肥が好気性超好熱菌の分離源として有用であることは明確に示された。さらに、「好熱性酵素遺伝子の単離」については、糖質分解酵素ファミリー10のキシラナーゼ遺伝子を増幅するため、コンセンサス配列領域のプライマーを用いてPCRを行ったところ、増幅断片が得られ、この断片をクローン化し、塩基配列を決定したところ、キシラナーゼ遺伝子との相同性が得られた。このことから、高温性堆肥が好熱性酵素遺伝子の分離源として有用であることが示された。以上の様に、ほぼ計画通りに研究は進捗している。
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Strategy for Future Research Activity |
既に、堆肥化プロセスにおける温度変化については測定した。その結果、高温となる部分が、下部から上部に徐々に移動していき、最終的に表面から25~50cm付近で、90℃以上の高温となった。しかし、この時の生菌数は、計数されなかった。通常、熱は高温部から低温部へ伝導するため、高温部で熱が発生していると考えられるので、生菌数測定の方法に問題がある可能性があるので、再度温度変化を測定しつつ、培養方法についても検討する必要がある。同時に16S rRNA遺伝子を標的とした菌叢解析を行う。また、熱の発生部位と最高温となる部位が異なる可能性も考慮する必要があり、その場合のメカニズムを明らかにする必要がある。 好気性超好熱菌の分離培養と好熱性酵素遺伝子の単離については、前年度に引き続いて行う。特に、細菌細胞壁分解能と脂質分解能を持つ細菌の分離を行う。 また、超高温性堆肥の小スケール培養を試みる予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
堆肥化プロセスの熱測定のために、熱電対等を購入する予定である。また、生菌数を測定するための培地等の試薬類、菌叢解析のための試薬・プラスチック器具類の購入のほか、菌叢解析の外部委託費を計上する。 好気性超好熱菌の分離培養と好熱性酵素遺伝子の単離を行うための培地等の試薬類および小スケールの堆肥培養を行うための試薬・器具類を購入する予定である。
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