2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24658085
|
Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
片岡 道彦 大阪府立大学, 生命環境科学研究科(系), 教授 (90252494)
|
Keywords | 微生物 / 応用微生物 / 酵素 |
Research Abstract |
本研究では、炭素二重結合を持つ化合物の変換反応の探索により見出したアクリル酸水和酵素活性を持つ2種の微生物について、本水和反応の基礎的な機能解析を行い、水和・脱水反応を用いた光学活性化合物やアクリル酸の生産への基礎的な検討を進めている。菌体を触媒的に用いたアクリル酸の水和反応を指標として、2種の菌株の培養条件の検討を行い、最もアクリル酸水和活性の高い培養条件を見出した。この条件で培養した菌体を超音波破砕し、無細胞抽出液と細胞残渣を得た。無細胞抽出液あるいは細胞残渣懸濁液を、アクリル酸を含む反応液と混合し反応を行ったが、3-ヒドロキシプロピオン酸の生成は認められなかった。遊離型のアクリル酸が本来の基質ではないことが予想されたため、CoAとのチオエステル体が基質になる可能性を考え、反応液にCoAおよびその誘導体、ATP等を添加して反応を行ったところ、アセチルCoAを添加した場合にその濃度依存的に3-ヒドロキシプロピオン酸の生成が見られた。これらの結果から、水和反応自体はアクリル酸がCoAにより活性化されたアクリリルCoAを基質として進行し、水和反応により生じた3-ヒドロキシプロピオニルCoAが加水分解され、最終的に3-ヒドロキシプロピオン酸が検出されたものと考えられる。CoAの添加では水和反応が進まなかったため、アセチルCoAとアクリル酸との間で、何らかの酵素の作用によりアクリリルCoAが生じているものと考えられる。そこで、遊離型のアクリル酸とCoAから、アクリリルCoAを合成できる高熱菌由来の酵素遺伝子をクローニングし、アクリリルCoAが水和反応の基質であることを証明しようと試みている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)菌体反応では高い活性が見られたアクリル酸水和酵素活性が、菌体破砕処理を行うと消失していたが、反応液にアセチルCoAを添加することで3-ヒドロキシプロピオン酸の検出が可能となった。(2)アセチルCoAの添加量とほぼ等量の3-ヒドロキシプロピオン酸が検出されたことから、アクリル酸とアセチルCoAを基質とする何らかの(おそらく酵素による)反応によってアクリリルCoAへの活性化が起こり、続いてアクリリルCoAから3-ヒドロキシプロピオニルCoAへの水和反応が起こっていると推定できた。(3)アクリル酸とCoAからアクリリルCoAを合成できる既知酵素遺伝子のクローニングをすることで、アクリリルCoAを基質とする水和酵素の精製・単離への目途がついた。以上のことから、おおむね順調に進展していると判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成25年度に得られた結果を基にして引き続き、(1)アクリル酸のC=C結合水和酵素の単離と機能解明、(2)3-ヒドロキシプロピオン酸の脱水反応によるアクリル酸の生産、に関して検討を進める。 (1)に関しては、酵素的に合成したアクリリルCoAを基質とする水和活性を指標として酵素精製を進めていく。各種カラムクロマトグラフィーを用いて触媒タンパク質の純化を試みる。純化した酵素タンパク質を用いて、酵素化学的な諸性質の解析を行い、さらにアミノ酸配列の決定等を行い、遺伝子クローニングのための準備を進める。(2)に関しては、3-ヒドロキシプロピオン酸あるいは3-ヒドロキシプロピオニルCoAを基質として酵素的脱水反応によるアクリル酸生産に関する検討を進める。
|
Research Products
(3 results)