2012 Fiscal Year Research-status Report
診断・ワクチン用ウイルス抗原タンパク質の酵母による多種類大量生産技術の開発
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24658096
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
赤田 倫治 山口大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (20201882)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | B型肝炎ウイルス / 酵母 / ワクチン |
Research Abstract |
病原性ウイルスの検出と予防において抗原タンパク質による感染検査試薬開発とワクチン生産が重要な課題である。新型インフルエンザウイルスやパンデミックウイルスなどへの対応では,抗原性が変化するので新型ワクチン生産が間に合わず,膨大な患者数が発生し,大きな社会問題となる。この解決法として,様々な抗原タンパク質の発現系を迅速に用意すること,および,その発現系から低コストで抗原タンパク質を大量生産することが考えられる。そこで,多種の抗原配列を設計し,高生産宿主酵母に導入後,速やかに実用的な大量生産系へ移行させ,得られるタンパク質から有効なワクチンや検査試薬を探す方法論の構築が考えられる。本研究では,数十~百種類のタンパク質発現系を迅速に用意し,大量生産する方法を開発することが目的である。 平成24年度はB型肝炎ウイルス抗原タンパク質の酵母での発現様式の解析を行った。GFPと融合したB型肝炎ウイルスのHBsLを酵母で発現すると急速に分解されることがわかった。そこで,その分解経路を調べるため,プロテアソーム変異株,オートファジー経路変異株を用いて,調べたところ,オートファジー経路変異株の一部では分解の抑制が部分的にではあるができることがわかった。しかしながら,分解を完全に止めることはできず,さらには,オートファジー経路の遺伝子のすべてが分解を抑制できるわけではないので,この分解経路にはいままで知られていない分解メカニズムが存在するのではないかと考えた。既知分解経路ではないという仮説を証明するためには,分解されない変異株を取得する必要がある。 一方で耐熱性酵母Kluyveromyces marxianusを利用してウイルス抗原タンパク質発現系を構築し,抗原タンパク質を高発現する遺伝子組換え酵母を取得することを試みている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
B型肝炎ウイルス抗原タンパク質は,もっとも古い酵母における遺伝子組換えタンパク質の実用化例であり,日本の画期的な成功例の一つである。したがって,当初は,本組換えタンパク質を酵母で発現させることは容易なことだと考えていたが,非常に難しいことがわかってきた。B型肝炎ウイルス抗原タンパク質は酵母では容易に分解され,1日でほぼ見えなくなる。タンパク質的にも数時間で発現は確認できるものの,正常タンパク質はほとんど生産されず,急速に分解されることが確認できた。その分解経路を既知の分解経路と比較しながら調べたところ,驚いたことに,プロテアソームやオートファジー経路のメイン経路ではないことがわかってきた。これらの遺伝子破壊株による実験は,順調に進展しているので,本研究は,外来タンパク質発現における分解経路の問題点を明らかにしつつある。しかしながら,重要な点は,その分解が完全に破壊株では抑制できないことであった。オートファジー経路はすでに多くの遺伝子がわかっているが,それらの変異のほとんどは抑制できず,ほんの一部の遺伝子のみがかかわることがわかった。このことから,肝炎ウイルス抗原タンパク質の酵母における分解経路には未知の経路が関わっているのではないかという仮説で今後は進める予定である。 一方,新しい酵母Kluyveromyces marxianusにおけるタンパク質発現システムの構築は予定通り進展し,新しい酵母で様々な遺伝子を発現させることができるようになった。肝炎ウイルスタンパク質も発現させることができたが,分解されている。しかし,変異を入れることが本酵母では容易なので,変異を利用した遺伝学的な解析を進める予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
B型肝炎ウイルス抗原タンパク質分解経路の解析 B型肝炎ウイルス抗原タンパク質は,酵母では急速に分解されている。この経路の一部はオートファジー経路である可能性が明らかになってきたが,分解が完全に止まるわけではない。そこで,本経路を明らかにするために,分解が止まる変異株をスクリーニングする計画を進める。増殖により,分解抑制を検出できる系を構築することが25年度の計画である。新たな分解経路である可能性があるので,分解抑制変異が取得できればその遺伝子が明らかにでき,タンパク質分解の新しいメカニズムが明らかにできるかもしれない。 B型肝炎ウイルス抗原タンパク質高発現へ向けて 耐熱性酵母K. marxianusはタンパク質発現量の高い宿主であり,変異遺伝子作成やその導入が容易な非常に扱いやすい酵母である。この酵母を用いて抗原タンパク質を一部削除したり,変異を与えることにより,分解のターゲットになる領域を特定する。さらに,高発現可能な変異を作成し,ワクチン生産への可能性を調べる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究費は変異株の作成や変異遺伝子を作成するためのオリゴヌクレオチドプライマーやPCR試薬がほとんどを占め,酵母の培養試薬類も必要とする。
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Research Products
(1 results)