2013 Fiscal Year Annual Research Report
イカ肝に含まれるカドミウム結合物質の構造解析とそのカドミウム集積への利用
Project/Area Number |
24658108
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
吉村 悦郎 東京大学, 農学生命科学研究科, 教授 (10130303)
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Keywords | カドミウム / イカ / カドミウム結合物質 |
Research Abstract |
XAFS分析を用いてスルメイカ肝臓中におけるCd化学形態の解明を行った。未処理のイカ肝とその抽出上清についてXAFSスペクトルを測定した。その結果、スルメイカ肝臓中のCd結合性物質は、肝臓、上清のどちらも主にS原子ではなくO原子がCdと配位していることが判明した。また、肝臓の部位によってX線の吸収スペクトルに変化はなく、肝臓中に同一のCd結合性物質が一様に存在していることが示唆された。 スルメイカ肝の抽出上清を、各種クロマトグラフィーで分離し、Cd濃度を指標として精製を行った。Cd高濃度画分は分取後、二次元電気泳動によって分離し、CBB染色を行った。その結果、分子質量約75kDaの画分にCdのピークを確認することができた。また、二次元電気泳動の結果5つのスポットが検出された。これらのスポットのうち、2つのスポットは約40kDa、3つのスポットは30kDaの分子質量であった。 二次元電気泳動で確認したスポットを、プロテインシーケンサでアミノ酸配列の解析を行った。得られたアミノ酸配列はデータベースに登録がなく、新規タンパク質であると考えられる。そこで、解析したアミノ酸配列からdegenerateプライマーを設計し、degenerate PCRを行った。現在増幅が確認できたDNA断片について、塩基配列を解析し、タンパク質の同定を進めている。 生体内でCdと結合するメタロチオネインやファイトケラチンのような物質はCdにS原子が配位している。しかし、本研究で行ったXAFS解析によりスルメイカ肝臓中に存在するCd結合性物質はS原子ではなくO原子と配位している物質であり、メタロチオネインとは性質の異なる物質であることが示唆された。また、肝臓と上清でスペクトルに違いが認められなかったため、上清のCd結合物質は肝臓に存在しているものと同様であることが示唆された。
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