2012 Fiscal Year Research-status Report
トランス脂肪酸はプラスマローゲンに組み込まれて動脈硬化を惹起するのか?
Project/Area Number |
24658112
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
原 博 北海道大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (70198894)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | プラスマローゲン / トランス脂肪酸 / 動脈硬化症 / 血管内皮細胞 |
Research Abstract |
プラスマローゲンは、心臓や脳のリン脂質の20%程度を占めるリン脂質のサブクラスであり、また、リポタンパク質にも含まれ、その分子内sn-1位のビニルエーテル結合は高いラジカル感受性を有することから、リポタンパク質中のコレステロールの酸化を抑制し、また血管内皮を適正に保つことにより、動脈硬化巣の発生を防御する因子として機能すると考えられている。一方、動脈硬化惹起性が知られているトランス脂肪酸の作用メカニズムには不明な点が多い。私どもはLC-MS/MSを用いたプラスマローゲン分子種一斉分析法を確立し、トランス脂肪酸が、プラスマローゲンのsn-1位に特異的に組込まれることを動物試験で見いだした。本研究では、プラスマローゲンへのトランス脂肪酸の組み込みが、血管内皮の動脈硬化関連因子にどのような影響を及ぼすかを検証した。 試験は、トランス脂肪酸の一種、エライジン酸を約40%含む菜種硬化油を、雄ラットに4週間以上摂取させ、採血、また各組織を採取した。血液は血清を分離し、そのまま希釈、ないし低密度リポタンパク質 (LDL) 分画を取り、ヒト臍帯静脈より採取した血管内皮細胞(HUVEC)の培地に、10-20%添加して、24-48時間培養した。回収した細胞はmRNAを抽出後、リアルタイムPCR法を用いて細胞接着因子であるICAM1, VCAM1の他MCP1, エンドセリン1の遺伝子発現を調べた。またELISAを用いて培地に分泌されたMCP1とエンドセリン1を測定した。血漿添加群では、測定した各遺伝子の発現上昇は見られなかったが、LDL添加群では上昇、特にトランス脂肪酸食のLDL添加群でVCAM1およびMCP1の遺伝子発現が大きく増加した。トランス脂肪酸の組み込まれたプラスマローゲンは血管内皮細胞において炎症反応を惹起し、単球の接着を増加させることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
トランス脂肪酸摂取ラットと血管内皮培養細胞を使って、トランス脂肪酸が組みこまれたプラスマローゲンの動脈硬化惹起作用を検討する試験計画1に関しては、ほぼ50%が達成されている。また、動物を使って検討する試験計画2、プラスマローゲンへのトランス脂肪酸が組み込み機構に関する検討は、現在40%程度の進捗である。全体的には、計画の50%程度の進捗と言える。
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Strategy for Future Research Activity |
計画は順調に進んでいるので、当初の計画通り、トランス脂肪酸摂取ラットと血管内皮培養細胞を使った試験計画1の後半50%を計画どおり進める。また、動物を使って検討する試験計画2も、予定通り進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
使用している培養細胞は、初代培養細胞であるため常に新しいものを購入する必要がある。このため、培地とセットになったこの人由来血管内補細胞の購入と、遺伝子発現を調べるための試薬、および液性因子測定のためのELISA測定キットを購入予定である。その他、実験動物(ラット)購入費用が主な研究費使途となる予定。
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