2012 Fiscal Year Research-status Report
消化管内分泌系を介する慢性炎症発症回避の機構解明:免疫系細胞と脂肪細胞の連関
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24658114
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
石塚 敏 北海道大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (00271627)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | メタボリック症候群 / 脂肪組織 / 慢性炎症 / 消化管内分泌系 / glucagon-like peptide / 腸管リンパ / 腸間膜リンパ節 |
Research Abstract |
メタボリックシンドローム発症には脂肪組織での慢性炎症の関与が知られている。過剰な遊離脂肪酸は炎症を惹起させることから、毎食後の脂質吸収の増加に伴い、脂肪組織は常に炎症が引き起こされるリスクにさらされていると言える。食事脂質は、脂肪酸が脂肪組織に到達するよりも前に、腸管上皮に散在する消化管内分泌細胞に認識され、消化管ホルモン分泌を促す。しかし、消化管ホルモンと脂肪組織、免疫系の関係については明らかにされていない。本研究では、栄養素摂取により分泌される消化管ホルモン(消化管内分泌系)が、日々の食事摂取により起こりうる不必要な炎症反応を抑えるかを検証し、そのメカニズムを解明することが目的である。腸間膜リンパ節細胞及び腸間膜脂肪組織を分離し、消化管ホルモンであるGLP-1やGLP-2の受容体に加え、脂質吸収に関与する胆汁酸の受容体gpbar1及びfxrの発現解析を実施した。より生理的な条件で免疫機能に及ぼす脂肪酸の作用として評価するために、腸管リンパにカニュレーションを実施し、脂質吸収後のリンパ液を経時的に回収した。この中の全GLP-1濃度を測定したとこと、脂質がリンパ節に流入する以前にGLP-1が流入すること、またある種のサイトカインが一過性に上昇すること、またその時の濃度は血中よりはるかに高濃度存在であることを見出した。以上のことから、脂質吸収直後に一過性に増加するGLP-1は、吸収された脂質より先に腸間膜リンパ節に到達し、炎症反応を調節する可能性が考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画で含まれていた脂肪細胞の分化に及ぼす作用は実施できていない一方、当初計画で策定したもの以上に生理的な条件での評価を可能した点を考慮すれば概ね順調と判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
当初計画では提示していないが、腸管リンパにカニュレーションを用いて、脂質吸収時に生じる消化管ホルモンやサイトカインのリンパ液中の経時的変化をもとにした、生理的な条件に即した評価系を構築している点は本研究を推進する上で極めて有用な特徴と考えられる。したがって、できるだけ生理的な条件で得られた情報を基盤として消化管内分泌系が慢性炎症に及ぼす作用を検証する方向で研究を実施する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究において備品購入の予定はない。 消耗品費としては、主に遺伝子解析に必要な試薬、加えて分離細胞の表面マーカー解析用の特異抗体、ホルモンやサイトカイン測定のためのELISAキットなどの購入を予定している。また、実験動物としてのラット及びその飼育に関わる飼料成分購入、さらに分離細胞を培養系で維持するために細胞培養器具類などの購入を予定している。 旅費としては、成果発表としての国内旅費あるいは外国旅費としての支出を予定している。
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