2012 Fiscal Year Research-status Report
そのまま食品分析を実現する1H‐NMR‐DOSY法の構築
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24658125
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
松井 利郎 九州大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (20238942)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 食品分析 / NMR-DOSY法 / グルコース定量 / そのまま分析 |
Research Abstract |
多成分が混在する食品成分複雑系からの目的成分の定量は、一般的に均質化、抽出・精製の過程を経てHPLC等の分離分析あるいは酵素法のような特異的検出法を用いて行われる。しかしながら、これらの方法は、煩雑な前処理を要する上に、実際のサンプル中の目的成分の存在状態(遊離・結合状態等)を考慮できないと考えられる。そこで本研究では、磁場こう配下での拡散係数の違いにより分離検出が可能なDOSY-qNMR法を用いた新規食品成分定量法の構築を試みた。なお、本年度は、対象食品成分としてD-(+)-グルコース(Glc)を選択した。 まず、Glc-α-C1プロトン(5.21ppm)を最適Glc指標プロトンとした。また、Glc測定の最適条件は、磁場勾配パルス幅 1.0 ms、磁場勾配パルス強度 50-300 mT/m、90°pulse 10.13 µs及びT1 2.989 sであった。D-(-)-フルクトース、Suc、デンプン等の糖類共存下におけるGlc-α-C1プロトンの検出性を評価した。その結果、Glcの拡散係数はD = 5.6×10-10 m2/sとなり、他の糖類共存下においてもD値に基づき2次元DOSY分離が可能となった。また、α-D-glucose-1-phosphate(α-C1プロトン:5.28 ppm)においてGlc濃度と積分値比との間に高い直線関係が得られ(r2 = 0.9959)、定量限界は1.6 mg/mLであることが示された。そこで、最適化した本法を用いて市販飲料中のGlc定量を実施したところ、従来法(Fキット酵素法)とほぼ同等の定量値が得られた(オレンジジュース中Glc濃度(mg/mL):DOSY-qNMR法 18.5±1.3, 酵素法 17.7±0.8)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度において、DOSY法が食品のような多成分系においても目的とする1成分の定量を可能とする分析法であることが明らかにできた。NMR-DOSY法による食品分析はこれまでに報告例がなく、本知見については現在論文投稿中である。以上のことから、初年度としては順調に成果が上がっていると客観的に判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
NMR-DOSY法の食品成分であるスクロース定量への適用性と分析条件の設定を行う。すなわち、 1)最適外部基準物質の選定 2)スクロース分離を可能とするD値(磁場こう配条件、パルス条件)を選定する 3)市販飲料を用いて本法、F-kit法、並びにHPLC法によるスクロース分析を行い、その一致性とNMD-DOSY法の妥当性評価を図る。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
以上、項目の達成に関わる経費として、 1)各種外部基準物質の購入経費:20万円 2)重水素化溶媒購入費:50万円 3)HPLCカラム、溶媒、F-kit代:30万円 4)旅費:5万円 5)人件費・謝金:10万円
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Research Products
(1 results)