2012 Fiscal Year Research-status Report
樹木の機能ゲノム学分野の創出に資するユニバーサルな網羅的遺伝子解析法の開発
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24658130
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
齋藤 秀之 北海道大学, (連合)農学研究科(研究院), 講師 (70312395)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
瀬々 潤 東京工業大学, 情報理工学(系)研究科, 准教授 (40361539)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 機能ゲノム学 / ブナ / DNAマイクロアレイ / ドラフトゲノム / ゲノム網羅的解析 / 遺伝子発現 / RNA-seq |
Research Abstract |
ブナの塩基配列情報の精緻化を目的として、ブナのゲノムDNAの塩基配列を次世代シーケンサーで網羅的に解読して、ドラフトゲノムの構築を行った。ゲノム・シーケンスに用いたプラットフォームはIllumina社製のもので、構築したゲノム・ライブラリーの種類はPaired-end用200 bp, 500 bp, 800 bpとMate-paired用の2 kbp, 5 kbpの5種類であり、次世代シーケンサーのHiSeq 2000を用いてシーケンスを行った。シーケンス・データをアセンブルした結果、contigの全長が366 Mbで、442 Mb(gap込み)のドラフトゲノムが完成した(ScaffoldのN50値が151 kb)。このブナのドラフトゲノムはブナの推定ゲノムサイズ(550 Mbp)の80%をカバーしており、有用なドラフトゲノムが完成したと考えられた。ゲノム全体の一塩基置換(SNPs)の出現頻度は12.34 SNPs/kbであり、これまでドラフトゲノムとして研究報告されてきた果樹(ブドウ、リンゴ、ミカン)と比べて高いSNPs出現頻度を示し、ブナの野生集団としての特徴を示したものと考えられた。ブナのゲノム解析で得たSNPsは、ブナの遺伝マーカーの開発に貢献できるものと考えられた。 現有のブナのDNAマイクロアレイの汎用性を検討する一環として、ブナの地理的な種内変異に対する適合性を検討した。北海道の日本海側型のブナと神奈川県で太平洋側型のブナを対象に、北海道のブナで開発されたDNAマイクロアレイを用いたゲノム網羅的な遺伝子発現解析を行ったところ、両地域のブナに対して解析が可能であることを確認できた。したがって、北海道のブナのゲノム塩基配列に基づいて開発されたDNAマイクロアレイのプローブは、ブナの地理的な遺伝変異に対しても適合して全国で広く利用が可能であると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ブナの塩基配列情報の精緻化については、ブナのドラフトゲノム配列の構築を完成させたので、当初の計画を大幅に上回る進展を実現した。 現有のブナのDNAマイクロアレイの汎用性についての検証については、ブナの地理的な種内変異に対して適合することを確認でき、着実に研究課題を実行することができた。 以上、初年度の2つの課題に対して概ね順調に進展していると評価できた。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画の修正ポイントとして、ブナのドラフトゲノムの構築を新規に設けた点がある。研究計画の申請時から採択までの間に、網羅的な遺伝子発現解析の手法は、DNAマイクロアレイ法から次世代シーケンサーを利用したRNA-seq法に移行してきた。その理由には、次世代シーケンスの解析価格の急激な低下とRNA-seqのデータ解析方法の発展にある。今後の森林樹木の機能ゲノム学の発展を考えるとDNAマイクロアレイ法よりもRNA-seq法のための基盤整備を優先する方が重要であると考えられる。したがって、当初の研究計画の第一課題であるブナの塩基配列情報の拡充と精緻化に対するエフォート割当を大きくして、ブナのゲノムシーケンス解析を実施してドラフトゲノムの構築を目指すことにした。ブナのドラフトゲノムの情報は、ブナ目の植物種においてリファレンス・ゲノムとしてRNA-seq解析に広く活用できるので、当初の到達目標であったユニバーサルなDNAマイクロアレイのプローブ開発の目的に対して包括的に代用させることができる。この様な理由から、ブナのドラフトゲノムの構築を新規に到達目標として設定した。 2年目の到達目標は、初年度に完成させたブナのドラフトゲノム配列に対して遺伝子領域の特定と機能推定の作業を行い、ドラフトゲノムを完成させることである。さらにブナの種内変異およびブナ科、さらにはブナ目の樹木へと広くゲノム網羅的な遺伝子発現解析ができるRNA-seq法のリファレンス・ゲノムとして活用できることを検証する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
初年度に構築したブナのドラフトゲノム配列に対して遺伝子領域を特定するために、ブナの発現遺伝子のRNA-seq解析を行う。このための費用として100万円を計上する。また、大量データの解析依託費用として10万円を計上する。 研究打ち合わせとブナの試料採取のための旅費として10万円を計上する。
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Research Products
(5 results)