2012 Fiscal Year Research-status Report
幹・枝の表面積に着目したメタボリック・スケール理論の検証
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24658134
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
城田 徹央 信州大学, 農学部, 助教 (10374711)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 非同化器官 / 表面積 / スケーリング / 曲線アロメトリー / メタボリックエコロジー |
Research Abstract |
本研究の目的は,これまで扱われてこなかった非同化器官のスケーリング特性を明らかにすることである。非同化器官は肥大成長を通じて,外側に通水等機能の高い部位を,内側に機能しない部位を配置する。そのため非同化器官の重量よりも表面積の方が,その機能をより反映すると考えられる。76年生および44年生のヒノキの幹と枝の表面積を計測し,同化器官(葉)との量的関係を解析した結果,次のことが明らかにされた。(1)同化器官の表面積はその重量の1.0乗に比例する。(2)非同化器官の表面積はその重量の0.75乗に比例しており,樹冠のフラクタル性が形成されていた。(3)非同化器官の表面積は同化器官の表面積と比例関係にある。(4)以上の結果は樹冠内部では樹齢に関わらずロバストであるが,樹冠下部を含む場合,関係性が逸脱する。これらの結果より,同化器官,非同化器官の表面積について,全重量との関係を演繹的にモデル化できた。このモデルによると,同化器官,非同化器官の表面積は「サイズが小さいときには全重量の1.0乗に比例するが,サイズが大きくなると全重量の0.75乗に比例する」といった曲線アロメトリーを示すことが明らかにされた。このモデルは,地上部バイオマスと地上部呼吸量の関係に非線形アロメトリーの関係を見いだしたMoriら(2010)の実証的研究の結果と矛盾しない。本研究成果は,サイズとエネルギーの生態学であるメタボリック・エコロジーに対して大きな寄与をもたらすものと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
メタボリックスケーリングに対する実証データを提示するという当初の目的は達成された。樹冠内部に限定されるという点は想定していなかった結果であり,解釈を重ねて議論を構築する必要がある。一方で,全体重量との曲線的関係は想定されていたものである。国際学会での発表・議論の結果,想定以上の評価を受け,比較的若い個体を対象とした調査を先行させる必要が生じた。
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Strategy for Future Research Activity |
樹冠内部で成立することから,林冠が閉鎖していないより若い林分の個体(10年生ヒノキ)での検証のため,その計測と解析を優先的に行う。同時に林分レベルでの値を推定し,過去にPAI:Plant Area Indexとして発表されている数値との比較を行う。樹冠内部に限定される点について,理論的構築が不十分であることから,文献の精読と論文の執筆を急ぐ。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
サンプリングと重量計測を済ませた10年生個体の表面積計測を行う。平成24年度7月の国際学会発表の際,個体全体の表面積は推定によって算出していたが,表面積に関しても個体全体のデータを推定なしに評価することが信頼性を高める上で望ましいという指摘を受けた。この指摘を受け,推定と直接計測を同時に行い,その結果を比較することに計画を変更した。この計画変更のために,計測サンプル量が増え,同時に計測補助が当初計画よりも多く必要となったために24年度予算を縮小し,25年度に繰り越した。なお研究成果を国内学会(植物学会@札幌,日本生態学会@広島)にて発表するために旅費を使用する。
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Research Products
(7 results)