2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24658155
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
近藤 隆一郎 九州大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (80091370)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
|
Keywords | マツタケ / 人工栽培 / 菌根菌 / アミノ酸 / 菌糸体 |
Research Abstract |
菌糸体形態変化誘導物質(MIS)の探索として,Fe源・N源の検討を行った.Fe源には,Fe2+(FeCl2)およびFe3+(FeCl3)を用い,各Fe源について100, 300, 500μMの濃度で菌糸体生長への影響を調査した. Fe3+では,1,000, 2,000 μMという高濃度の条件も検討した.その結果,菌糸体の肥厚・気中菌糸形成といった形態変化には,Fe3+の寄与が大きいことがわかった.濃度に関しては,1,000 μMの濃度まで,濃度依存的に肥厚し,気中菌糸を旺盛に形成した.菌体乾燥重量も同様の傾向を示した.また,2,000 μMという高濃度でさえ,生長阻害は見られなかった.このことから,マツタケはFe3+を好む菌であることが示唆された.N源の検討では,無機態として酒石酸アンモニウム,有機態として,3パターンのアミノ酸混合組成を検討した.無機態のN源では,肥厚せず,気中菌糸をあまり形成しない菌糸体に生長した.乾燥重量も低く,マツタケ菌糸体培養には適していないと考えられる.アミノ酸混合組成は,いずれも高い乾燥重量を与えた.興味深い事に,アミノ酸組成の違いにより菌糸体形態が異なった.N源に関しては,アミノ酸混合組成のパターンを増やして現在検討中である. アカマツ-マツタケ共培養系の確立を目指した検討では,ゲルを用いた完全人工環境下での,アカマツ無菌実生の長期培養の結果、2ヶ月程度で多くの個体が枯死した.菌体懸濁ゲルを用いてマツタケとの共培養系も試作したが,いずれも枯死・生長阻害が見られ,未だ確立には至っていない.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
培地の組成変化による菌糸体の形態変化という現象は、子実体形成に対して重要な意味を有している。さらに、独自に開発した新規培養法である菌体懸濁ゲル培養法は、栄養に富んだ培地で作成 した菌体懸濁液をそのままゲル化した培養法であり、マツタケに関してこれまで、液体培養でも平板培養でも実 現しなかった子実体原基様菌糸塊の形成を、土壌等の天然培養基を用いずに初めて確認した。 平成24年度は、平板培養を用いたスクリーニングにより、培地組成からMISの探索を行なうと同時に、菌体懸濁 ゲル培養法を用いたアカマツ-マツタケ共培養系の確立並びに菌根形成を目指した。 1.平板培養を用いたMIS探索実験 これまでに見出したMISであるZn、ニコチン酸、葉酸の他、炭素源及び窒素 源、鉄化合物を対象として行なった。その結果、鉄化合物およびアミノ酸が有効であることが見いだされた。 2.菌体懸濁ゲルを用いたアカマツ-マツタケ共培養 一般に菌根菌と宿主植物の共生が成立するには、炭素源と窒素源の量及び比(C/N比)が重要であると言われて いる。そこで、菌体懸濁ゲルを作成する培地組成の炭素源、および窒素源の含有量・種類・C/N比に着目して、 菌根形成に最適な共培養培地の開発を行ったが、アカマツ無菌実生の長期培養の結果、2ヶ月程度で多くの個体が枯死した.菌体懸濁ゲルを用いてマツタケとの共培養系も試作したが,いずれも枯死・生長阻害が見られ,未だ確立には至っていない.
|
Strategy for Future Research Activity |
1.菌根内網羅的代謝物解析によるMSM並びにMISの探索 共培養系で得られた菌根の代謝物を溶媒抽出し、疎水性画分をGC/MSに、水溶性画分をLC/MSに供して代謝物プロファイルを得る。コントロールとして菌体フリーで培 養したアカマツの根を用いる。得られた代謝物プロファイルをコントロールのものと比較し、MSMを探索する。M SMの中からMISを見出すために、平板培養によるスクリーニングを行なう。 2.MIS添加培地による菌体懸濁ゲル培養 平板培養を用いたスクリーニングにより見出された各MISを添加した 菌体懸濁ゲルを作成し、FPM形成へのMISの影響を調べる。 3.菌体懸濁ゲル培養サンプルへの環境刺激付与による子実体原基形成試験 FPMを形成した菌体懸濁ゲルサン プルに対して、キノコ栽培で一般的に用いられている環境刺激である、低温・光・二酸化炭素濃度といった種々 の刺激を付与して子実体原基形成を試みる。低温刺激付与試験では、天然でマツタケ子実体が発生する地温である16~19 °Cを目安に設定する。子実体原基と判断される菌糸塊へと生長した場合、菌糸塊断面の切片を作成し 、組織学的解析に供す。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度と同様に、物品費、旅費、謝金として使用する。物品費は、マツタケの菌糸培養の消耗品の購入に充てる。
|
Research Products
(1 results)