2012 Fiscal Year Research-status Report
規則性人工リグニンポリマーによるモノリグノール重合の制御
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24658156
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Toyama Prefectural University |
Principal Investigator |
岸本 崇生 富山県立大学, 工学部, 准教授 (60312394)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | モノリグノール / 脱水素重合 / テンプレート / 鋳型 / 人工リグニンポリマー |
Research Abstract |
本研究は、比較的疎水的であるといわれている樹木細胞壁内のリグニンの生合成環境をフラスコ内で再現し,筆者らが独自に合成に成功したβ-O-4型人工リグニンポリマーを,生長しつつあるリグニンの鋳型(テンプレート)として作用させることにより,モノリグノールの脱水素重合の制御を行うと共に,どのような機構によってリグニンの化学構造が決定されるのかを明らかにし,フェノール類の重合制御による機能性ポリマーの合成へと展開するための基盤技術を確立することを目的としている。本年度は、まずアセトフェノン誘導体を出発物質にして、テンプレートとなるβ-O-4構造のみで結合した人工リグニンポリマーをg単位で化学合成を行った。さらに、西洋わさびペルオキシダーゼを用いて、両親媒性のポリエチレングリコール(PEG)鎖が導入された有機溶媒耐性ペルオキシダーゼの調製を行った。有機溶媒耐性化のための反応条件の最適化にはさらに検討を要するが、電気泳動(SDS-PAGE)を用いてペルオキシダーゼの分子量の測定を行った結果、得られた有機溶媒耐性ペルオキシダーゼは、ペルオキシダーゼ1分子あたり、PEG鎖が2分子導入されたものと、5分子の導入されたものに相当していることが分かった。同様にラッカーゼに対して有機溶媒耐性化処理を行った。その結果、未反応のラッカーゼは消失したが、明確な分子量をもつラッカーゼは得られなかった。この点についてはさらに検討を要する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定していたβ-O-4型人工リグニンポリマーのgスケールの合成を行い、さらに2年目以降に行う予定であった有機溶媒耐性酵素の調製も進めた。しかし、同位体ラベル化は行えなかったので、全体としては概ね順調であると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
研究の進展に合わせて20万円の前倒し支払請求をした結果、当初の予定よりも多くの研究費を使用した。しかし、最終的には次年度使用する予定の額が15580円となった。全体の経費と比べて少額であり、消耗品の購入等に充てる。 今後は、調製した有機溶媒耐性ペルオキシダーゼを用いて非水系溶媒(有機溶媒やイオン液体)中で,モノリグノール(コニフェリルアルコールおよびシナピルアルコール)の脱水素重合を行い,溶媒の疎水性の影響や,鋳型の影響を明らかにする。具体的には,以下のことを行う。①通常の西洋わさびペルオキシダーゼ,および有機溶媒耐性ペルオキシダーゼを用いて,水系~非水系溶媒(緩衝水溶液,有機溶媒,イオン液体)中でモノリグノールの脱水素重合を行い,PEG修飾の効果と,溶媒の疎水性の影響を明らかにする。②鋳型として,β-O-4型人工リグニンポリマー,またはヘミセルロース(キシラン,グルコマンナン)を用いて,有機溶媒(ジオキサン等)またはイオン液体と有機溶媒の混合溶媒中(AmimCl/DMAcまたはAmimCl/DMSO)で,モノリグノールの脱水素重合を行う。③脱水素重合物(DHP)の化学構造を,1H-13C HSQC NMR等のスペクトル法を用いて明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
関連情報を収集するため、2年に一回行われるInternational Symposium on Wood Fiber and Pulping Chemistry(ISWFPC2013)(バンクーバー、カナダ)に出席する。その旅費として約20万円を支出する。その他は、物品費として酵素や薬品、器具等の消耗品の購入に充てる予定である。50万円以上の備品の購入は予定してない。
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