2012 Fiscal Year Research-status Report
リグニン変換バイオリアクター構築のための白色腐朽菌の菌糸鞘の機能解明
Project/Area Number |
24658161
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Research Institution | Forestry and Forest Products Research Institute |
Principal Investigator |
高野 麻理子 独立行政法人森林総合研究所, きのこ・微生物研究領域, 主任研究員 (10353749)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 菌糸鞘 |
Research Abstract |
白色腐朽菌の菌体構造は、菌糸と菌糸外にある菌糸鞘と呼ばれるゲル状物質との混成体である。菌糸鞘は、以前から菌体外酵素の保持濃縮の場としての重要性が指摘されてきたが、具体的な機能については明らかになっていなかった。本研究は、白色腐朽菌のリグニン分解において、菌糸鞘の持つ機能を解明することを目的とする。平成24年度は、菌糸鞘の生成とリグニン分解反応の相関について検討した。リグニン分解条件として、パルプ培地を設定し、白色腐朽菌P. crassa WD1694株の菌糸鞘の生成と分布の状態を位相差顕微鏡とフロキシンB染色による菌糸鞘染色法の併用によって分析した。その結果、菌糸鞘は、培養24時間後から培養2日目まで顕著に認められたが、培養3日目以降は、染色強度の低下とともに菌糸鞘の減少が認められた。対照実験として、非リグニン分解条件を設定し、同様に菌糸鞘の生成状態を観察した。非リグニン分解条件下では、リグニン分解条件下より菌体の生育量が多かったが、菌糸鞘の生成から減少に至る分布状態の変化にはリグニン分解条件との相違は認められなかった。次に、菌糸鞘の生成とリグニン分解ペルオキシダーゼ反応との相関を調べた。フロキシンBによる菌糸鞘の染色とペルオキシダーゼ活性染色の二重染色結果より、菌糸と菌糸鞘でパルプを凝集した菌糸塊内部で菌糸先端から菌糸に沿ったペルオキシダーゼ活性染色の生成が認められた。これらの結果より、菌糸鞘の生成はリグニン分解条件に限定されないこと、しかし、菌糸鞘の生成時期とリグニン分解酵素反応の時期が一致したことから、菌糸鞘には分泌されたリグニン分解酵素やその反応を保持する機能のあることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本課題では、白色腐朽菌の菌糸鞘のリグニン分解における機能を解明することを目的としている。菌糸鞘は構造上定義される物質であるため、組織化学的な研究段階と、リグニン分解反応系を構成する酵素や酵素基質の特定を行う生化学的な研究段階から研究計画を構成している。平成24年度は、組織化学的な実験手法によって、菌糸鞘の生成保持減少に至る過程を追跡することに成功した。菌糸鞘は無色透明の粘性物質であるため観察手法を確立し、培養条件を比較検討することで目標を達成した。次に、菌糸鞘の観察方法とリグニン分解酵素反応の活性染色を併用することで、リグニン分解酵素反応が菌糸鞘の生成時期に生じることを確認した。これらの結果より、平成24年度の目標である組織化学的な菌糸鞘の生成条件の確立と、リグニン分解酵素反応と菌糸鞘の関連性の確認を達成した。
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Strategy for Future Research Activity |
研究の全体計画では平成25年度はリグニン分解反応系に関与する酵素類の特定を予定している。平成24年度の研究成果より、菌糸鞘の機能としてリグニン分解酵素の輸送、保持機能と、基質になるパルプの凝集機能が推定された。菌糸鞘のこれらの機能について分析を進める。平成24年度の研究成果より、菌糸鞘の生成条件および菌糸鞘の生成保持減少過程が明らかになったため、可能であれば、菌糸鞘の構造解析を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
繰越金125,000円を、リグニン分解酵素および菌糸鞘の分析試薬に使用する予定である。
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