2012 Fiscal Year Research-status Report
魚類の分離胚細胞からの個体再生に関わる発生工学的研究
Project/Area Number |
24658163
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
山羽 悦郎 北海道大学, 北方生物圏フィールド科学センター, 教授 (60191376)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | キンギョ / ゼブラフィッシュ / 深層細胞 / 増殖因子 / 多分化能 / 発生工学 |
Research Abstract |
本研究は、解離・凍結保存させた胚細胞から新たに胚盤を再構築し、個体の再生や、組織の培養を目指す発生工学の研究である。魚類の胞胚までのそれぞれの割球は生殖系列を除き多分化能を示す。本年度は、1)割球の収集方法の開発、2)胚細胞の分離条件下での集合能力の検定、3)分離培養下での分化能力の変化の検定、4)割球への人為的誘導の効果の検定を行った。 その結果、①キンギョ胞胚を、クエン酸ナトリウムを含む培養液中でホモジナイズし、密度勾配遠心により割球と卵黄を分離する方法を開発した。②キンギョおよびゼブラフィッシュの分離胚細胞は、細胞低吸着の培養プレート中での旋回培養により大型の細胞塊を形成した。しかし、細胞は相互に凝集し、胚盤様の構造はできなかった。③コラーゲンコートされたプラスチックシャーレ上で分離細胞は自律的に運動し、小細胞塊を形成した。この塊でも細胞は相互に凝集していた。④胞胚期より分離した胚細胞を分離状態で一定時間の培養後、同種の胞胚へ移植し多分化能を検定した。その結果、培養条件下では多分化能が維持されないことが明らかとなった。⑤胞胚の胚盤中に増殖因子を注入後、一定時間後に一部の割球を取り出し宿主胞胚へ移植した。その結果、ドナー細胞の脊索への分化が認められた。 現在の所、分離胚細胞の胚盤への再構築はできていないが、分離胚細胞をin vivoで一定の組織へ分化誘導できる可能性が示されている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
胞胚の胚細胞を成長因子の注入で処理し、その後、移植することで一定の細胞へ分化させることができたことは大きな進展である。一方、胚盤を再構築することができていない。胚盤は、上皮である上皮層と解離した細胞である深層細胞から構成されている。この異なった2種類の細胞からなる構造体を誘導することには困難が予想されていた。
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Strategy for Future Research Activity |
1)球状の空隙をもつ細胞外マトリックスの中に細胞を閉じ込めた状態で胚盤の再構築を試みる。 2)胚盤が再生された場合、正常発生胚の様々な発生段階の卵黄細胞を移植し、再構築した胚盤の発生能力を検定する。細胞分化の過程は、初期発生過程に発現する遺伝子を指標にして解析する。 3)増殖因子による処理により、胞胚期の胚細胞を脊索に分化させることが可能となった。脊索は、最も強い誘導を受けた中胚葉が分化することが明らかとなっている。そこで、増殖因子の濃度を変化させ、より腹側領域の中胚葉の誘導を試みる。誘導後、割球を正常胞胚へ移植し、この胚の中での組織への分化で分化能力を検定する。これらの細胞の分化については、gsc、ntl, gata5などの遺伝子の発現でも解析する。 誘導をかけた胚細胞をアニマルキャップに移植し、卵黄細胞からの誘導が無い状態での胚体の再生を試みる。 4)
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
昨年度の残金を含めた約1380千円の研究費うち、細胞培養に要する培地や器具、試薬類等の物品費に1000千円、成果報告旅費に200千円、魚類の世話・細胞の培養等の謝金として約18万円の支出を計画している。大型の機械は必要としない。
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