2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24658171
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
望岡 典隆 九州大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (40212261)
|
Keywords | ニホンウナギ / 葉形仔魚 / 尾虫類 / 食性 / 初期餌料 |
Research Abstract |
ニホンウナギの人工種苗生産は、水産総合研究センター増養殖研究所における長年の研究により、平成22年に念願の完全養殖に成功し得た。しかし、養鰻業の存続とニホンウナギ資源の保全に急務とされる種苗の大量生産には至っていない。問題点として飼育環境、初期餌料等が提起されているが、その中で緊急に取り組みべき課題は初期餌料の新規開発である。本研究は天然のウナギ目仔魚の餌を詳細に解明し、これをベースとした新規餌料を開発し、その評価を天然ウナギ目仔魚を用いて行うことにより、安定大量種苗生産に資する技術開発を行うことを目的とする。 前年度の研究により、尾虫類のハウスと糞粒はウナギ目葉形仔魚の消化管から見いだされる餌の一つであり、ニホンウナギの産卵海域である西マリアナ海嶺南部海域で実施され、口径36cm, 側長200cm, 網目0.06mmの閉鎖型プランクトンネット(伊東・望岡, 2005)による4観測点での層別鉛直曳網によって採集されたサンプルを解析したところ、尾虫類は、2科(オタマボヤ科、サイヅチボヤ科)8属27種が出現した。尾虫類の個体数密度は95~163 indiv. m-3であり、1観測点を除いて50-100m層にピークが認められ、水深300m以深での出現は稀であった。当海域ではサイヅチボヤ科のFritillaria borealis f. sargassi (ネッタイサイヅチボヤ)とF. formica (アリサイヅチボヤ) およびオタマボヤ科のOikopleura fusiformis(トガリオタマボヤ)の3種で約60%を占め、これらが放棄したハウスや糞粒がウナギ仔魚の餌資源となっていると推測された。 これら外洋性の尾虫類の採集と培養を試みたが、海況(台風接近等)に恵まれず、状態のよい尾中類の採捕に至らなかった。また、沿岸に出現する尾虫類に比べて外洋性種は脆弱でハンドリングに改善が必要である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成24年度の成果でニホンウナギの接岸回遊過程における尾虫類組成が解明され、餌候補を絞ることができた。これらを培養し、天然のウナギ目葉形仔魚に投餌すべく、採集を試みたが、悪海況(台風接近)に阻まれ、状態のよい尾虫類の採捕に至らなかった。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成24年度に解明した餌候補尾虫類を培養し、九州東岸域で採捕した天然のウナギ目葉形仔魚に投餌することが今後の課題である。九州東岸における熱帯・亜熱帯外洋域の尾虫類出現時期は夏~秋季であり、昨年は海況(連続的な台風接近)に阻まれ、状態のよい尾虫類の採捕に至らなかった。また、外洋性の尾虫類は沿岸性のものに比して、脆弱であり、サンプリング方法含めて改善する必要があることが判った。事業期間の延長が認められたので、次年度に改良した方法で採集と培養を試みる予定である。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度の研究成果によって明らかになった天然ウナギ仔魚の餌候補である外洋性尾虫類を平成25年度に培養し、当該尾虫類由来の餌を天延ウナギ目魚類仔魚に投餌する実験を行う予定であったが、フィールド調査時の海況に恵まれず、状態の良い尾虫類の確保に至らなかった。そこで、次年度に再実験を実施したく、補助事業期間延長を申請した。 上述の状況より、外洋性尾虫類の培養とそれに基づく餌を天然ウナギ目仔魚への投餌実験を行い、次年度使用額はその経費に充てる予定である。
|