2012 Fiscal Year Annual Research Report
自然水界中における現場細胞スナップショット解析技術の開発
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24658180
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Research Institution | Fisheries Research Agency |
Principal Investigator |
長崎 慶三 独立行政法人水産総合研究センター, 研究推進部, 研究開発コーディネーター (00222175)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2013-03-31
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Keywords | 透過型電子顕微鏡 / 植物プランクトン / 凍結置換法 / 赤潮 / 超低温凍結固定 / 水圏微生物生態学 |
Research Abstract |
細胞の生理状態を形態学的に理解するためには電子顕微鏡観察が必須である。しかしながら、多様な現場環境の植物プランクトンを対象とし、細胞の形態を維持しつつ観察することはきわめて困難であった。本研究ではこの難問を解決すべく,従来、細胞生物学分野で用いられてきた『急速凍結置換固定法』を植物プランクトンの固定観察に適用することで、より簡便に各細胞の生理状態を理解する手法の構築を目的とした。 まず本研究では急速凍結置換法の一般化に向け、複数種のプランクトン株について急速凍結置換法を試用した。その結果、単純に液化プロパン中に細胞ペレットを投入する手法を適用し、さらにポータブルディープフリーザーで冷却したアセトンを用いて固定液置換を行うことにより、全株において急速凍結置換固定が成功した。またポアフィルター上に細胞ペレットを乗せ、フィルターごとサンプルを処理する手法によって単細胞生物でも簡便に急速凍結置換を行う手法を確立した。 本手法の現場適用事例として、夏季以降にブルームを形成したHeterosigma akashiwo等について本手法による急速凍結置換固定を試みた。その結果、現場細胞サンプルを直接用いた実験においても上述の固定法は上手く機能した。さらに興味深いことに、現場サンプル中のH. akashiwo細胞は培養中の細胞に比べて液胞が発達していることが確認された。液胞は固定液の浸透圧によって形態が変化する構造であり、液胞構造の違いをこのように明確に観察できたのは急速凍結置換法を用いた観察ならではの結果であると考えられる。 植物プランクトン細胞が現場環境下でどのような細胞内形態を呈するかについて、現場レベルで調査できる道筋を示したことは本研究の最大の成果であり、萌芽研究として意義ある研究となったといえる。また方法論の概略をウェブサイトで公開するなど、技術の普及にも努めた。
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Research Products
(3 results)