2013 Fiscal Year Annual Research Report
トランスクリプトーム解析による二枚貝の浸透圧調節分子機構の解明
Project/Area Number |
24658182
|
Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
渡部 終五 北里大学, 水産学部, 教授 (40111489)
|
Keywords | ヤマトシジミ / メタボローム解析 / トランスクリプトーム解析 / 塩分 / 涸沼 / 涸沼川 / 潮汐 / cDNAライブラリー |
Research Abstract |
茨城県におけるヤマトシジミCorbicula japonicaの主要漁場は涸沼川と涸沼からなる涸沼川水系にある。涸沼川下流域は海岸域からの距離が近いため、潮汐の影響を強く受けるのに対し、涸沼ではその影響が少ない。本研究では、汽水性無脊椎動物の環境塩分の変化に対する遺伝子発現や代謝の調節機構解明のため、ヤマトシジミの鰓および足筋を用いてメタボローム解析を行い、さらに雌の鰓を対象にトランスクリプトーム解析を行った。 2012年6月7日のヤマトシジミ採取地の涸沼川では、満潮時で塩分20.5 ‰、水温18.0 度、干潮時で4.0 ‰、21.7度であった。一方、涸沼では2.8 ‰、22.4 度と一定であった。満潮時および干潮時の涸沼川および涸沼からヤマトシジミ雌雄それぞれ5個体を採取し、各個体から鰓および足筋を摘出した。次に、キャピラリー電気泳動-飛行時間型質量分析用の試料溶液を調製し、代謝産物の解析を行った。さらに、涸沼川の満潮時および干潮時に採取した雌から鰓を摘出し、mRNAを調製してcDNAライブラリーを作製し、Ion Torrent PGM次世代シークエンサを用いてトランスクリプトーム解析を行った。 ヤマトシジミ雌の鰓を対象としたメタボローム解析の結果、β-アラニン含有量は満潮時の方が干潮時と比べて2.3倍多かった。次に、グリシンベタイン量は干潮時の方が満潮時と比較して1.4倍多かったが、その前駆物質であるコリンおよびベタインアルデヒドは満潮時の方が多かった。また、オルニチンは満潮時の方が2.8倍多かった。トランスクリプトーム解析の結果、オルニチン生成酵素アルギナーゼをコードする遺伝子のmRNA蓄積量は、満潮時の方が4.4倍多いことが明らかとなった。以上の結果から、ヤマトシジミは環境塩分の変化に対応して種々の代謝物質が変化し、その変化が遺伝子で制御されていることが示唆された。
|