2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24658183
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
加納 哲 三重大学, 生物資源学研究科, 教授 (80177550)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 真珠 / アコヤガイ / タンパク質 / シート / フィルム / 結晶 |
Research Abstract |
申請者は真珠の輝きをつくりだしている本体を球形の透明なタンパク質フィルム(真珠タンパク質フィルム)として真珠から分離した.本研究はこの真珠タンパク質フィルムを用いて,カキなどの真珠をつくらない貝類でも真珠を造らせる方法を検討し,真珠産業へと応用展開するための基礎的研究に挑戦するものである. 本年度はアコヤ真珠およびアコヤガイの貝殻からそれぞれ真珠タンパク質フィルムおよび真珠タンパク質シートを作成した.作成した真珠タンパク質フィルムおよびシートを適当なサイズに切り分け,アコヤガイの外套膜外面上皮に挿入し,2ヶ月間養殖場でアコヤガイを飼育しアコヤガイ貝殻内面およびタンパク質シート上の炭酸カルシウムの結晶の生成の程度をUSBマイクロスコープDino-Lite pro 500x (ANMO Electronics Corporation) を用いて反射光による500倍で観察を行った. さらに生成した結晶面に金をコーティングし走査型電子顕微鏡S-4000(日立) によって析出した炭酸カルシウムの結晶を観察した. 真珠タンパク質シート表面および真珠タンパク質シート剥離後の貝殻面に結晶状の物質の析出が確認された. これはアコヤガイ真珠タンパク質シートの挿入により, 結晶の析出を促進した可能性が示唆される. 平成25年度はこれらの結晶が真珠層を構成するアラゴナイト結晶かカルサイト結晶であるかを確認し,ガラス板や真珠核に対して結晶が析出するかを調べ,さらにアコヤガイ以外のカキなど他種の貝類においてどのように結晶析出に影響を及ぼすか確認する予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成24年度終了時には真珠タンパク質フィルムおよびシートを貼り付けたガラス板を飼育中のアコヤガイ外套膜外面上皮部または生殖巣に挿入し,ガラス面にカルシウムの析出が進むかどうかを調べるところまで研究を進める予定でいた.ところがアコヤガイの貝殻の真珠層タンパク質シートを準備し,これをアコヤガイに挿入する時期が秋になりアコヤガイが大きく生育する時期からずれたため,真珠層タンパク質シートを貝へ挿入する実験が1回しか行えなかった.この実験の後,ガラス板に貼り付けたタンパク質シートを挿入する実験を行う計画でいたので,予定より実験がやや遅れている.平成25年度の春からは生育期に入り旺盛な生育を示すので遅れを取り戻すことは可能である.
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は下記の2項目を予定している. ◆ガラス板上でのカルシウム結晶の生成の確認:真珠タンパク質フィルムまたはシートによるガラス板上でのカルシウム結晶の生成をアコヤガイおよびそれ以外のカキなどの貝類に広げて調べる.まずa.ガラス板に貼り付けた真珠タンパク質フィルムまたはシートをアコヤガイの外套膜外面上皮部へ挿入しガラス板上でのカルシュウム結晶の生成を調べる.b.カキやそれ以外の二枚貝を用い各々の貝類の外套膜外面上皮部での真珠タンパク質フィルムまたはシートによるガラス板上でのカルシュウム結晶の生成を調べる.c.アコヤガイやそれ以外の貝類でカルシウムの結晶層が生成された場合には,その微細構造,表面の成分分析を電子顕微鏡,EPMA,マイクロXPS等の分析装置を用いて詳細な構造解析を行う. ◆真珠核を用いてカルシウム結晶の生成の確認:実際に真珠産業で使用されている真珠核に真珠タンパク質フィルムまたはシートを貼り付け,アコヤガイまたはそれ以外の貝の中でカルシウムの結晶層を生成することができるかどうか検討する.まずa.真珠核にフィルムまたはシートを貼り付ける方法を検討する.b.真珠タンパク質フィルムまたはシートを貼り付けた真珠核をアコヤガイやそれ以外の貝の外套膜部または生殖巣に挿入し,結晶層の生成を確認する.c.結晶層が生成されたらその構造を電子顕微鏡,EPMAやマイクロXPS等の分析装置を用いて詳細な表面構造の解析を行う.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
「次年度使用額」が8,457円発生した.これは平成24年度に予定していた物品費および旅費を予定より安価に抑えたために発生した.これに平成25年度配分予定額の900,000円を加えた908,457円が本年度の研究予算となる. 本年度の研究経費は薬品,プラスチック器具,ガラス器具などの消耗品に加え電子顕微鏡,EPMAやマイクロXPS等の分析装置の使用料金さらにはアコヤガイの養殖場までの旅費や学生への謝金および学会発表のための経費等が中心となる.
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