2012 Fiscal Year Research-status Report
渡り鳥の飛来する湖沼底泥の農業用肥料としての利用可能性に関する研究
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24658197
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
梶原 晶彦 山形大学, 農学部, 助教 (60291283)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 富栄養化 / 湖沼底泥 / 肥料 / 渡り鳥 / 水質浄化 |
Research Abstract |
本研究では、富栄養化湖沼の底泥を農業用肥料として利用することを目指している。特に大量の渡り鳥が飛来する農業用ため池(大山下池)を対象として、水質汚濁の要因となる底泥の除去と肥料としての利用可能性に着目した。 平成24年度は、水稲、コマツナのポット栽培による生育比較、土壌分析により、大山下池の底泥に蓄積した鳥の糞を含む土壌が肥料として有用かどうかを検討した。 大山下池からの採泥は5、7、10月に行った。水稲の品種はササニシキを用い、1/5000aワグネルポットに底泥の施用割合をかえた試験区計7区を作成し、各3反復とした。生育調査は1日おきに草丈、茎数、葉色を測定した。コマツナの品種はトーホク交配の早どり小松菜を用いた。試験区は、1/5000aワグネルポットに園芸用土壌を入れ、化成肥料を入れた慣行区、慣行区の化成肥料と同等の窒素量になるように調節した試験区、無肥区の計3試験区各3反復とした。また、コマツナについては作物体分析を行った。土壌分析の項目は窒素、リン、カリウム、有機物である。 水稲を用いた実験については草丈、茎数、葉色の全ての項目で、各試験区に有意差は出なかった。水稲実験の土壌分析については全窒素が5月0.951%、7月1.050%、10月0.858%であり、有機物は5月33.1%、7月37.3%、10月28.1%であった。各項目に差がなかったことから、底泥に含まれている窒素が緩行性、あるいは水田土に残留していた肥料分で出穂前までは成長できることが考えられる。土壌成分については全窒素、有機物ともに10月採取分が低い値を示した。これは夏季において、ヒシやハスなどが繁茂したことによって底泥から栄養分が供給されたと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画では、平成24年度は以下の研究を行う予定であった。①底泥内に含まれる栄養塩含有量と阻害成分を計測し、肥料成分としての利用可能量を求める。②肥料として利用するために必要な前処理について検討する。③水稲を対象として室内及び室外ポット試験によって成育への影響を調査する。 これに対し、①底泥を時期別に採取して栄養塩含有量等を分析した結果、渡り鳥の飛来する秋季および翌年春季に栄養塩類が多量に含まれており、代替肥料として用いることができることが明らかになった。②前処理については、生土、自然乾燥土、炉乾燥土を比較した結果、炉乾燥土(60℃)が最も適していることが明らかとなった。③水稲およびコマツナを用いてポット実験により成育調査等を行った結果、最適な施用量を明らかにすることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画では、平成25年度は、以下の研究を行う予定であった。①現地水田への施用によって成育への影響を調査し実用性を検討する。②実際の流通可能性について検討し、研究全体のまとめを、行う。 しかし、①に関しては、鳥インフルエンザの流行により、渡り鳥の糞尿の含まれる湖沼底泥を実際の水田に施用することは困難となった。そのため引き続きポット試験によって実地研究を行う。特に平成24年度に一部明らかにできなかった成育阻害成分の含有について検討を進める。また②に関しては、コスト計算と共に、JA、農家等からも聞き取りを行い、流通可能性について検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
大量データを処理可能な情報処理システム(パーソナルコンピュータおよび附属機器)を購入する。また引き続き水、土壌、作物体の分析を行うため、前年度と同様に、標準液、試薬、ガラス器具等を購入する。また、調査旅費、実験補助謝金の他に、成果発表のための旅費を使用する予定である。
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