2013 Fiscal Year Annual Research Report
渡り鳥の飛来する湖沼底泥の農業用肥料としての利用可能性に関する研究
Project/Area Number |
24658197
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
梶原 晶彦 山形大学, 農学部, 助教 (60291283)
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Keywords | 溜池 / 栄養塩 / 水質保全 / 肥料 / メタン発酵処理 |
Research Abstract |
本研究では、富栄養化の進んだ溜池水質保全策の一環として、湖沼底泥の除去後の再利用を目指し、農業肥料化やメタン発酵に関する知見を得ることを目的とした。研究対象とした溜池では、特にその要因として冬季に飛来する渡り鳥の糞尿が考えられたため、底質の季節変化性なども考慮して検討を行った。 まず平成24年度は、季節による底質の変化を調査すると共に、溜池底泥を肥料とした水稲とコマツ菜の生育についてポット実験によって検証した。その結果、底質の栄養塩類濃度が最も高くなるのは水生植物(ヒシ、スイレンなど)が繁茂する前の初夏であることが明らかとなった。ポット試験では、水稲、コマツ菜ともに生育指標(草丈、葉色、茎数)について化学肥料を用いた対照区とほぼ同様の結果が得られ、底泥の肥料としての利用可能性が示唆された。 平成25年度は、引き続き水稲の生育についてポット試験によって検証し、溜池灌漑用水の受益地農家や周辺住民などとの意見交換を行い、実用可能性について検討した。生育試験では、やや緩行性の傾向が見られたが、初期の底泥投入量を増やすことによって前年同様に化学肥料区とほぼ同様の結果が得られた。また、意見交換では鳥インフルエンザ等による影響を懸念する農家が多く、風評被害の対策についても考慮しなければならないと考えられた。次に、他の底泥の利用可能性として、メタン発酵処理について検討を行った。還元剤や酢酸ナトリウムの添加による影響、温度環境による影響について室内実験を行い、結果として、研究対象とした溜池底泥から約14%の利用可能なレベルのメタンガス発生が可能であること、25℃~30℃程度の培養温度と酢酸ナトリウムの添加が有効であることが明らかになった。 以上のように、本研究では溜池底泥の利用可能性について多角的に検討し、いずれも実用化が可能なレベルであることを明らかにすることができた。
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