2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24658200
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
土居 良一 東京大学, 農学生命科学研究科, 助教 (20587125)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | タイ / チュニジア / 土壌カラム / デヒドロゲナーゼ活性 |
Research Abstract |
室内での予備試験として、商業的農業生産に利用されている栃木県内の畑地の土壌を、プラスチックの筒に充填して、土壌カラムを作成した。これに、バジル幼植物を移植した根圏カラムとした。根圏カラムにおけるデヒドロゲナーゼの活性測定法を、既存のよく確立された方法(以下土壌けん濁法と呼ぶ)と現位置測定法で比較した。その結果、基質たるブドウ糖をトリス緩衝液(pH 7.6)で与えた場合、土壌けん濁法と同程度の酵素活性を検出できることがわかった。他方で緩衝液を含まず、ブドウ糖溶液を与えた土壌カラムでは、その活性が検出できなかった。このことから、デヒドロゲナーゼの根圏での活性測定を可能とするためには、基質溶液のpHが中性付近である必要が示された。このことは、同時に、土壌中でデヒドロゲナーゼが存在する位置において、緩衝能力を持たない基質溶液が与えられた場合、そこが必ずしも最適pHとはならないことを示唆している。また、土壌カラムとバジルの系を利用して、土壌デヒドロゲナーゼ活性測定に必要なテトラゾリウム化合物とブドウ糖を含む緩衝液の量を確認した。結果、土壌カラムの体積に対して、最適な緩衝液量が得られ、これが0-5 cm 深さにおいて、1割以上3割までであることがわかった。ただし、水分が飽和している場合、より深い層へのテトラゾリウム-ブドウ糖入り緩衝液が到達しにくいことも観察された。屋外での土壌水分によっては、より深い層での活性測定を目的とする場合、注入するための機材を利用せざるを得ないと考えられた。なお、今後、緩衝液を含んだ基質溶液を利用して、実際の作物生産圃場での測定試験を行うため、チュニジアとタイの圃場を訪問した。試験を実施するための圃場を確定した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
土壌カラムを用いた試験において、当初予想された活性測定検出の困難がなかった。反面、与える基質の量や、とくに土壌pHの制御に寄与する緩衝液の必要性は新な知見として得られた。チュニジアやタイでの協力者との協議も進んでおり、今後の展開がしやすい状況となっている。
|
Strategy for Future Research Activity |
土壌酵素の一つとして、デヒドロゲナーゼの現位置活性測定が可能であることが分かった。他方で、土壌中での物質循環において重要な役割を果たす他の酵素の活性測定方法も考慮したい。現位置でなく、けん濁液などでは、活性測定がよく確立されているものもあり、それらについても、現位置での測定が可能かを検証する。現在、基質や生成物が大きくことなり、土壌中の物質循環の異なる側面を担うであろうプロテアーゼ、アミラーゼなどの活性測定が可能であると期待されるので、これらについての試験を行う考えである。 また、緩衝液に基質やテトラゾリウムを加えた液を加えることは、根圏への生理的影響が大きく、人為的な結果を招いている可能性も疑われる。そこで、この欠点を回避するために、土壌中への緩衝液や基質の注入を最小限度化すべく、個体やゲルを埋設し、それらの表面と土壌の接触面で生成物の検出を行う方法を試験したい。 同時に、前年度に発見された、土壌水分が多い場合、土壌の深い層まで緩衝液や基質が至らなかったことを回避する目的で、緩衝液や基質を注入する機材を開発する予定である。これは、金属の筒状のもので、土壌に対してドリルのように差し込んで行き、その内部を通じて緩衝液が送られる機構をめざす。同時に、その先端部分に、基質を含む上述の固体やゲルを当該機材の先端を通じて、土壌に接触させる方法も適用を試みる。 これら試験を実験室、および実際に作物生産を行っている屋外の圃場にて行う。土壌水分や温度といった条件の影響も抽出したい。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今後の建久推進方策で述べたデヒドロゲナーゼ以外の土壌酵素活性を測定するための試薬やガラス器具などのほか、より深い土壌の層に緩衝液やゲルを至らしめるための機材の試作や改良、現場への移動や土壌サンプルの搬送に利用する見込みである。
|