2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24658200
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
土居 良一 東京大学, 農学生命科学研究科, 助教 (20587125)
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Keywords | 現位置土壌酵素 / デヒドロゲナーゼ / セルラーゼ / 強度 |
Research Abstract |
現位置土壌酵素活性測定の方法として、とくに土壌微生物群集の活動に強く関係するデヒドロゲナーゼの活性測定方法を中心に検討してきたが、いくつかの問題点が明らかとなった。ひとつに、基室としてのテトラゾリウム化合物の土壌生態系への毒性が見られた。土壌生態系への毒性は、当酵素活性測定の農業生産等の現場における利用を著しく制限することとなる。また、当初計画していた、デヒドロデナーゼを含んだ観点などのジェルは、土壌に埋設後徐々に水分を失ったり、ジェルそのものが微生物に分解され、小さくなり、あるいは、形状も変化するなど、回収時に問題が発生した。 これらの問題をもたず、かつ、農業生産等の現場土壌中での土壌の生理活性に強く関与する酵素として、セルラーゼに着目した。土壌セルラーゼ活性の測定は、従来、綿糸やろ紙などの分解を、それぞれ、綿糸の強度低下やろ紙の形状保全/消失といった項目の定量により行われてきた。しかし、それらの方法では、土壌の構造を保持した状態での活性測定は不可能であり、また、ごく表層の土壌セルラーゼ活性のみが測定可能である。本研究では、これらの限界を超えて、土壌のより深い層まで基質であるセルロースを、土壌構造の破壊をともなわず、構造を保持したまま到達させることを試みた。 現在までに、潅水と地下水位-20cmでの水稲栽培を行い、現位置土壌セルラーゼ活性の定量化のための竹串を土壌深度25 cm まで挿入した竹串サンプルを確保した。また、当測定方法の最適化のために、予備試験を実施、こちらも竹串サンプルを確保している。近々これら竹串サンプルの曲げ強度低下を定量し、水稲栽培時における地下水位の土壌セルラーゼ活性に及ぼす影響を評価する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初はデヒドロゲナーゼでの測定が簡易、鋭敏かつ正確に実施可能であると考えられた。ところが、その生態毒性が本研究でも確認されたため、テトラゾリウム化合物を利用する現位置土壌酵素活性の生産現場土壌への悪影響が憂慮された。それ以外にも、予想外の技術的困難が発生したため、農業生産などの現場土壌のデヒドロゲナーゼ活性測定の実行可能性は低いと考えられた。 また、農業生産現場として、タイとチュニジアでの測定作業を計画していたが、両国とも国内の政治問題がしばしば先鋭化し、渡航機会が限定されることがあった。そのため、チュニジアにいたっては、農業生産現場での酵素活性測定に適した雨季の渡航ができなくなった。タイにおいても、現在のところ、比較的安定して農業用水が得られる低地での試験に限定され、やや標高が高い台地などでは、試験を実施できていない。
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Strategy for Future Research Activity |
竹串など、木材の強度低下を利用した現位置酵素活性測定は、とくに木材を構成するセルラーゼやリグニンの分解を通して可能である一方、その応用が過去に行われたことはない。さらに、従来の土壌セルラーゼ活性は、農業生産現場などの土壌構造を破壊することを伴い、それによる、土壌条件のかく乱がともなうものであった。他方、本研究では、竹串など、木材を土壌に差し込んで、本来の土壌構造の中で、かつ、上層と下層の土壌の各々の現位置土壌セルラーゼ活性を評価することができる。これらのことから、本研究では、木材の主な成分であるセルロースの分解による木材強度低下を観察し、現位置土壌セルラーゼ活性として評価することを中心として作業を進める。 現在までに、ポット試験による水稲栽培において、その土壌中に差し込んだ竹串のサンプルを確保している。また、竹串を利用した当測定方法の最適化用サンプルも確保したので、近々その強度を測定し、新品の竹串からの強度低下を数量化する。これらを通じて、最適化された現位置土壌セルラーゼ測定方法をタイとチュニジアの農業生産現場の土壌に適用して、(1)適用される稲作技術による現位置土壌セルラーゼ活性の違いや、(2)蔬菜類など、作付け体系の違いによる現位置土壌セルラーゼ活性の違いを検出できるか、試験する。 現在のところ、現位置土壌セルラーゼ活性測定に関係して、行った予備試験結果をまとめている。化学系の専門誌に提出する予定である。昨年夏季に実施した水稲栽培や最適化に関する専門誌での発表も可能であれば行いたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初予定していた一部の作業を延期とした。とくに、タイとチュニジアでの政治的不安定は、現地での作業を危険なものとした。このため、渡航と試験のタイミングが限定され、一部の費用を利用しなかった。 次年度はタイやチュニジアでの試験が不可能となった場合、日本国内での試験に振り替えることを検討している。また、派生した技術的課題もあり、室内実験などでの開発や検証を実施するため、これらに予算を充当したい。
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Research Products
(1 results)