2012 Fiscal Year Research-status Report
新燃岳火山灰を活用した環境修復ブロックの開発に関する基礎研究
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24658205
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
細川 吉晴 宮崎大学, 農学部, 教授 (40146337)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 火山灰 / 環境修復 / ブロック / 土木材料 / 農業工学 |
Research Abstract |
新燃岳(霧島連山の一つ)は,平成23年1月末に大規模に噴火し都城市周辺に降灰し平地で約5cm厚で堆積した。その降灰堆積量はすこぶる多いので,その有効利用として環境修復ブロックの開発を目的として基礎研究に着手した。火山灰のpH値は,採取地で異なり4.7~6.7まで幅広く酸性側であった。採取したときの降灰の置かれている状況からみて,降灰後に降雨との接触頻度が高く堆積層が数cmの厚さの場合ではやや大きなpH値(中性側)を呈した。噴出ガスの多くがSO2で火山灰中に含有し,噴火で外に放出されると空気中の酸素と化合してSO3に,また雨水と接し硫酸H2SO4に変わるとみられ,そのために降灰を受けた露地野菜などは生育や収量に直接的に影響を受けたといえる。 火山灰のコンクリート細骨材としての適性を明らかにするために,降灰地別の火山灰の諸特性試験や火山灰混入モルタルの強度や保水性の試験を行った。その結果,粗粒率は0.81~3.17と幅広いことがわかる。噴火時の風向きで南東に流れた火山灰について,地図上で火口から採取地までの直線距離と粗粒率との関係をみると,火口に近いほど大きな粗粒率(大粒)であり(P<0.01),細かな火山灰ほど火口から遠方に運ばれていた。また,火山灰は概ね密度が小さく吸水率が高めであり,火山灰のみをコンクリート用細骨材に利用するには無理があるため,砕砂等の良質な細骨材との混合使用が妥当との判断から,火山灰の混入率を変えたモルタル供試体を作成して強度試験を継続中である。同様に,アルカリ骨材反応試験も長期試験を行なっている。 なお,当初,鹿児島県に産するシラスとの比較を行なう予定であったが,鹿児島市で噴火中の桜島の火山灰を収集し,その諸性質を分析しながら保水型のブロックに利用可能か検討中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究では,予定していた鹿児島県産のシラスに代わり,噴火中の桜島(鹿児島市)の降灰の利用も併せて検討することとし,新燃岳の降灰堆積箇所から必要な材料を調整確保できた段階で,神奈川県内のブロック工場の協力を得ながら火山灰混入ブロックを試作できた。これは,予定していた南九州管内のブロック工場の協力を得られなかったためである。 ただ,アルカリ環境下で潜在硬化性の確認試験を行なったが,文献に見られるような発現が認められなかったため,再実験中である。 以上のことから,再実験のものもあるが,概ね計画以上の進展があったと判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は,最近噴火した新燃岳の降灰を有効利用した環境修復ブロックの開発を目的としているので,ブロック表面の面モルタルに着目し,その適正配合とコケ量との組み合わせ(コケ移植方法)とその後のコケ成長観察,あるいは,コケの易付着性の向上対策も,コンクリートブロックの擁壁各種を実態調査成果を踏まえながら,緑化システムの基礎研究を進める。 また,新燃岳および桜島の火山灰を混入率を変えて歩道用ブロックを実機の製品工場で製造し,その強度や保水性などの特性比較から,望ましい混入率の最大値を求める試験を行なう。 以上の結果や平成24年度の成果も加え,本研究の成果を取りまとめ報告書を作成する。そのほか国内・海外での学会発表を行い,火山国の方々と火山灰の有効利用について議論を深める機会を持つ予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度試験の成果の一部を国内学会(農業農村工学会の全国大会・支部大会)で2つ,国際学会(京都市開催,外国)で2つを予定し,その旅費および緑化・火山灰関連調査旅費,ブロック製造のための旅費も必要で計55万円を組んだ。 また,面モルタル試験とブロック製造の物品費(15万円)とその人件費(12万円)で計27万円を予定し,その他(学会参加費や修理費など)に18万円として,計100万円を見積もった。 当初の科研費査定額が少なかったことから,相当の不足が予想される。
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