2012 Fiscal Year Research-status Report
植物利用型医薬品生産における目的タンパク質の非破壊・非接触定量技術の開発
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24658217
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
富士原 和宏 東京大学, 大学院農学生命科学研究科, 教授 (30211535)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松田 怜 東京大学, 大学院農学生命科学研究科, 講師 (20547228)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 生体情報計測 / インフルエンザワクチン / ベンサミアナタバコ / 一過性遺伝子発現 / クロロフィル蛍光 / 光合成 |
Research Abstract |
本研究は,植物を利用した迅速かつ安価な有用タンパク質生産法として早期の実用化が期待できる一過性遺伝子発現法において,植物体内の有用タンパク質含量を非破壊・非接触で測定する生体情報計測技術を開発することを目的としている。ここで,一過性遺伝子発現法とは,植物ウイルス (あるいはその遺伝子) の機能を利用することで,植物に一過的に外来遺伝子を発現させる方法である。本年度は,生体情報計測技術としてクロロフィル (Chl) 蛍光計測を用い,有用タンパク質含量を反映するChl蛍光パラメータを探索した。生産するワクチンタンパク質にはA型インフルエンザウイルス (H1N1) 由来のヘマグルチニン (HA) を,また供試植物にはベンサミアナタバコを用いた。遺伝子導入後の気温を25℃とし,各種パラメータの経時変化を測定したところ,遺伝子を導入しない対照区に比較して,遺伝子を導入した処理区では,HAの生産に伴って,光化学系II (PSII) の熱放散活性を示すNPR,1-Fv'/Fm',およびFv/Fm-Fv'/Fm'の低下が認められた。また,PSIIの実効量子収率を示すΦPSIIに若干の低下が観察された。最大量子収率を示すFv/Fmには対照区と処理区との間に有意な差は認められなかった。他方,遺伝子導入後の気温を20℃とした場合には,対照区と処理区との間でこれらのパラメータに必ずしも有意な差が認められなかった。このことは,遺伝子導入後の栽培環境によって,Chl蛍光計測による有用タンパク質含量の推定が可能である場合とそうでない場合がある可能性を示唆している。また,気温25℃におけるHA含量と各種パラメータとの間の定量的な相関関係についても,今後さらに検討する必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
測定自体は当初の予定通り進展している。他方,当初の想定と異なり,Chl蛍光計測による有用タンパク質含量の推定に栽培環境依存性がある可能性が示唆されたため,それをもたらす原因の解明が当面の課題である。また,自作のクロロフィル (Chl) 蛍光計測システムは現在製作途中である。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度である次年度は,まず栽培環境によって有用タンパク質含量とクロロフィル (Chl) 蛍光パラメータとの間の関係が,栽培環境によって異なる原因を調査する。おもに葉内のタンパク質動態を解析することで,原因の一端を明らかにできるものと推察している。同時に,Chl蛍光計測と光合成ガス交換測定をも組み合わせることで,遺伝子導入後の葉の生理状態の変化を調べ,有用タンパク質含量を反映しうるより適切な生体情報を見出す予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初の想定と若干異なる結果が得られたことから,支出予定を一部変更した。これに伴い,消耗品費等について繰越しが発生した。また,本年度内には公表に値する程度の成果には達しなかったことから,旅費の支出も当初の見積りを下回った。次年度は,上記の今後の研究の推進方策に基づき,主に消耗品費として研究費を使用する予定である。また,研究成果発表,情報収集,および海外共同研究者との情報交換のための旅費の支出も予定している。
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