2013 Fiscal Year Annual Research Report
植物利用型医薬品生産における目的タンパク質の非破壊・非接触定量技術の開発
Project/Area Number |
24658217
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
富士原 和宏 東京大学, 大学院農学生命科学研究科, 教授 (30211535)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松田 怜 東京大学, 大学院農学生命科学研究科, 講師 (20547228)
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Keywords | 生体情報計測 / インフルエンザワクチン / ベンサミアナタバコ / 一過性遺伝子発現 / クロロフィル蛍光 / 光合成 |
Research Abstract |
本研究は,植物を利用した迅速かつ安価な有用タンパク質生産法として早期の実用化が期待される一過性遺伝子発現法において,葉内の有用タンパク質含量を非破壊・非接触で推定する生体情報計測技術を開発することを目的としている。ここで,一過性遺伝子発現法とは,植物に後天的に遺伝子を導入し,一過的に発現させる方法である。また,非破壊・非接触での生体情報計測技術として,飽和パルス法によるクロロフィル(Chl)蛍光計測を用いる。本年度は,Chl蛍光の計測条件の検討を中心に研究を進めた。遺伝子導入には解体ウイルスベクター(magnICON)を,生産する有用タンパク質にはインフルエンザウイルスに対するワクチンタンパク質であるヘマグルチニン(HA)を,また供試植物にはベンサミアナタバコを,それぞれ用いた。播種後35日目にHAの遺伝子を導入し,気温20℃で6日間栽培した。また,対照として非遺伝子導入株を同様の条件で栽培した。遺伝子導入後3および6日目の葉内HA含量,純光合成速度,およびChl蛍光パラメータを測定した。遺伝子導入株では,遺伝子導入後3から6日目にかけてHA含量が増加した。これに伴い,遺伝子導入株の飽和光(PPFD 1,600 μmol m-2 s-1)下における遺伝子導入後6日目の純光合成速度は,非導入株のそれより有意に小であった。さらに,遺伝子導入株の飽和光下における光化学系IIの実効量子収率および熱放散活性は,非導入株のそれらに比較して,それぞれ小および大となる傾向にあった。これらの結果から,遺伝子導入後のHA含量の増加に伴う光合成能力の低下を,Chl蛍光パラメータの計測により非破壊・非接触で推定できる可能性が示された。今後は,有用タンパク質含量の定量的な推定にとって最適なChl蛍光パラメータとその計測条件を見出すとともに,HA以外の有用タンパク質への適用可能性を検証する予定である。
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