2013 Fiscal Year Research-status Report
知的環境認識型ワイヤレスネットワークを用いた害獣検知と出没予測
Project/Area Number |
24658218
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
杉浦 彰彦 静岡大学, 情報学研究科, 教授 (40235867)
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Keywords | WPAN / 環境認識 / 位置推定 / 知的 / 予測 / 獣害 / 猿 |
Research Abstract |
獣害対策を目的に、知的環境認識型ワイヤレスパーソナルエリアネットワーク(WPAN)技術を用いて、猿の行動把握・出没予測を行う。知的環境認識のための「知」の獲得に向けて、猿の位置推定に環境認識型ネットワークを適用し、基礎データの収集を効率的に行う。本提案では、知的環境認識型WPANを現行の害獣検知無線方式(ARIB STD-T99)とリンクし、自動かつ低コストに位置推定を行う。これにより、追い払い等の侵入対策が効率的にできるようになる。さらに、出没情報を基に、知的環境認識理論を応用して、猿の行動予測を行うことで、信頼性の高い被害軽減システムへと発展させる。 知的環境認識型ワイヤレスパーソナルエリアネットワーク技術を用いて、猿の行動把握・出没予測を行うために、要素技術について基礎研究を進める。さらに、要素技術を有機的に結合させて、猿出没予測の可能性を探る。初年度の研究では、主にワイヤレスパーソナルエリアネットワーク(ZigBee等)の親和性について検討する。具体的には、知的環境認識型ワイヤレスネットワークにZigBeeを適用するための基礎検討を行う。現行の獣害無線方式とWPAN方式をリンクさせたプロトタイプの作成を目標とする。概ね、以下①~③の3項目について中心に実験を進める。 ①無線方式の代用として、例えば数十台の無線LAN(IEEE802.11系)を利用して、学内等でも実験できる環境を整備し実機実験を行い、WPAN方式の実働確認と問題点の洗い出しを行う。②プロトタイプとして実際の獣害無線とWPANを接続した専用機器を作成し、端末の位置推定を行う。③位置推定の結果を知的環境認識の理論に当てはめ、猿の行動の検知や予測を試みる。ここでの最低限の目標は、プロトタイプ端末の完成とする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の研究では研究を遂行するために、知的環境認識を用いた山間部における位置推定手法の適応性について中心に実験を進めた。回線トラブル等の課題もあり、達成度は90%程度と考える。 現行の害獣検知システムの主な問題点である誤報、検知ミスについて、知的環境認識を適応させることで、改善を図る。誤報、検知ミスについて、シミュレーションモデルをたて、計算機上で再現し検討を行った。ここでの最低限の目標は、シミュレーションレベルでの誤報、検知ミスを確認した。さらに、前年度のフィールド試験の結果を踏まえて、実用化を念頭に研究の展開について検討した。現行の害獣検知システムの主な問題点である誤報や検知ミスについて、外来雑音やパケットロス等の状態を、設置環境や適用状況ごとにモデル化し、知的環境認識を適用し改善性を検証した。また同システムの最適化を目指し、様々な状態を想定したシミュレーション実験を行い、知的環境認識の適応を検討した。 さらに、現行の獣害対策無線方式とWPAN方式のリンクを図り効率的なシステム運用を実現する。ここでは、獣害対策無線端末とモバイル回線を利用して、フィールド試験ができる環境を整備し実機実験を行うことで、適用性を評価し問題点の洗い出しを行った。また、プロトタイプとして実際の獣害無線とモバイル回線を接続した専用端末を制作し、各方式の長所を取り入れた手法を提案し、実働評価を行い、端末の位置推定を実現した。さらに、位置推定の結果を知的環境認識の理論に当てはめ、猿の行動の検知や予測を高精度で実現するために正確なデータを収集した。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度までに収集した猿の位置情報や環境要因を精査し、SVM学習アルゴリズムを適用して出没予測を行う。既存測定点で、これまで測定した電波強度から位置測定を行い、単純な推定理論を適用して、猿の村落への侵入経路を予想する。ここでは24~25年度の出没情報を教師データとして、26年度の出没予測を行い、精度について検証する。また、現地住民に出没記録を参照し、実際の出没状況を確認することで、予測の信頼性を評価する。さらに、現地住民への猿検知の通知や、出没予報の配信の方法などについても検討し、利便性の高いシステムの開発を目指す。例えば、村落側の動きも猿の出没に大きな影響があるため、人々の動きと出没の関係などについても検討していきたい。なお、学習アルゴリズムについては、必要に応じて提案目的に適した手法に変更していく予定である。 実用化に向けて残された技術的課題は、①通信距離や信頼性などの検証・改良、②乾電池で数ヶ月の運用を目指すために省電力モードについて検討、③実験では開発キットを利用するが、実用化に際しては猿に付ける端末サイズをマッチ箱程度にする必要があること、④実際に普及させるためには、端末1台の価格も千円程度にしなければならないことなどがある。まず、①通信距離・信頼性の問題を解消するために、今後の実験ではWPANの適用が難しい山間部においては、モバイルデータ回線などの適用について積極的に検討する。また、②電源確保の問題を解消するために、山間部でのAC電源確保についても検討する。例えば獣害対策の電気柵や農業用器材用の電源の活用について検討する。さらに、③開発キットの利用から汎用器材の組み合わせによるシステムの簡素化を進め、④コストなどの問題も同時に解決を目指す。
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