2012 Fiscal Year Research-status Report
FANOVAを援用した野菜の硝酸代謝応答変動の非破壊検出法開発
Project/Area Number |
24658219
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
伊藤 博通 神戸大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (00258063)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 国際情報交換(ベルギー) / 生体計測 / 近赤外線分光法 / FANOVA / レタス / 硝酸代謝 / 硝酸イオン濃度 / 非破壊計測 |
Research Abstract |
供試作物にはレタス(Lactuca sativa L.,cv.“Greenwave”)を使用した。人工気象機(三洋電機(株)、MLR-350)内で2週間栽培した。栽培環境は気温22℃、光量子束密度80μmol m-2 s-1とした。湿度とCO2濃度は非制御である。光源はLED(CCS(株)製ISL-150×150-RB)を使用した。試験区はR/B比(赤色光と青色光の光量子束密度の比)および明暗周期によって決定され、R/B比が1, 5, 10, 20の4試験区、明暗周期が1h/1h, 3h/3h, 6h/6h, 12h/12hの4試験区、合計16試験区で栽培実験を行った。各試験区の栽培株数は4株であった。栽培実験中にFANTEC社製のFRUIT QUALITY ANALYZERにより近赤外線吸光スペクトルをサンプリング周期20分で連続自動計測した。測定可能波長領域は600 nm-1000 nmで分解能は2 nm、積算時間は50 msとした。上述の連続自動計測とは別に収穫時に取得したスペクトルと収穫株の硝酸イオン濃度値を濃度推定モデル作成に使用した。また、硝酸イオン濃度経時計測を栽培開始直後から行うため、育苗後直ちに収穫したサンプルも解析に加えた。硝酸イオン濃度実測値の測定はイオンクロマト法(東亜DKK(株)、IA-300)によって行った。校正実験で使用したサンプル数は394であった。 硝酸イオン濃度経時計測には2つの検量線を適用した。サンプルの生体重増加量が5.6 g以下の場合と5.6 gを上回る場合とで別の検量線を適用した。小さいサンプル用検量線の推定精度は相関係数が0.55、大きいサンプル用のそれは0.86となった。この検量線を使用してレタス内硝酸濃度経日変化を測定した。 Matlabを使用してFANOVA解析プログラムの開発を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度の実施計画は次の2点であった。 ・人工気象機内でレタス株の近赤外線スペクトル連続計測を実施し、FANOVA法による解析に必要なスペクトルおよびスペクトルから計算される硝酸濃度値データを収集すること。 ・Matlabを使用したFANOVA解析プログラムを作成すること。 平成24年度に行った栽培実験結果および作成した硝酸濃度推定モデルによりFANOVA法に適用するスペクトル並びに硝酸濃度の経時計測データを取得することができた。また、FANOVA解析プログラム開発に必要なソフトウェアを準備してプログラム開発環境を整えた。解析プログラム作成は順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
FANOVA解析の成功の鍵はS/N比の高いスペクトルおよび精度の高い硝酸濃度推定値の取得である。24年度に得られた検量線はレタスの大きさに応じて2モデルを適用している。このうち小さなレタスに適用するモデルの推定精度が低くなった。 モデルの推定精度向上のためには第一にS/N比の高いスペクトルを取得することが必要である。24年度のスペクトル測定では外乱光の受光防止のために栽培室を暗幕で区分けしている。暗幕にフェルト布を使用していたが、24年度中にフェルトは近赤外線を反射することが判明した。レタスが小さい場合にハロゲン照射光の内で葉に当たらず暗幕に照射される成分が大きくなり、外乱光が受光プローブに入射する確率が高くなる。これをなるべく防止するために暗幕に近赤外光を吸収するスポンジゴムを使用することにする。これによりS/N比が高いスペクトルを計測できるようになり推定精度の高い検量線を得ることができると予想される。 条件が拘束された通常の近赤外線分光計測と異なり外乱が多く存在する本計測で精度の高いモデルを得るためには多くのサンプルが必要である。LED光源のR/B比別にモデルの推定精度を調べたところ、この値が5あるいは10の時に推定精度が高くなった。そこで25年度ではR/B比を5および10に限定し、この条件の下で栽培するサンプル数を増やすことにより推定精度向上を見込むことができるデータを増加させる予定である。また、24年度では校正実験で使用したレタスは収穫時のサンプルが多かったが、実際に経時計測を行う場合は様々な大きさのレタスが存在する。25年度は想定される大きさのレタスを偏りなく準備し、校正実験に使用する予定である。 取得したスペクトルと硝酸濃度値をFANOVA法で解析する。この解析により硝酸代謝が大きく変化する期日を検出することが目標である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当該助成金が生じた状況:想定していたよりも海外出張の回数が少なく、外国旅費が少なくなったことおよび高額なイオンクロマトカラムの交換がなかったことにより当該助成金が生じた。 研究費使用計画:25年度は24年度と同様に栽培実験およびスペクトル計測を継続するため、この実験に必要な試薬、園芸資材、水耕肥料、イオンクロマトカラム、解析ソフトウェア等の消耗品を購入する。また、成果発表や研究調査のための海外出張および国内出張を予定している。実験機器の老朽化に伴い故障が想定されるため機器修繕費の発生を想定している。
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