2012 Fiscal Year Research-status Report
動物専用周波数帯を用いた放牧牛のリアルタイム監視装置の開発
Project/Area Number |
24658225
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
竹田 謙一 信州大学, 農学部, 准教授 (90324235)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 放牧管理 / 家畜行動 / ICT利用 / 原発事故 |
Research Abstract |
【目的】放牧牛の位置把握は、日常の個体管理や発情牛、疾病牛の発見など、放牧牛管理の省略化につながると考えられる。本研究では、2008年に改正された電波法に準拠した動物専用周波数帯を用いた放牧牛のリアルタイム監視装置の精度を検証した。 【方法】①平坦な採草地で、2素子2基型の八木アンテナを備えた受信ユニットを設置した。実験者がGPS受信機(以下、GPS)と動物専用発信機LT-01(以下、V発信機)を携帯し、任意の14ポイントで測位した。②福島県内の旧原子力災害警戒区域であったH牧場で実験した。前述の受信ユニット6局(2素子2基型×4局、3基型×2局)を放牧地を囲むように、また放牧地の中心に1局(2素子4基型)設置した。次に、H牧場で保護されている被災牛の中からホルスタイン雌牛3頭にGPSとV発信機を固定した首輪を供試牛に装着し、放牧した。首輪装着後から22.5時間、供試牛の位置を測位した。供試牛の測位と同時に、日中の6.5時間、各供試牛の行動、V発信機のアンテナの向きを5分間隔で、個体追跡法で記録した。放牧地内の任意の16ポイントで定点測位し、GPSとV発信機による測位誤差を算出した。 【結果】①平均測位誤差は、77.36±76.87mとなった。②分析に供することができるデータ9958点を得た。GPSとV発信機の平均測位誤差は、94.1±174.07mだった。V発信機のアンテナの向きは、測位誤差に影響しなかった。測位誤差は供試牛の行動によって有意に異なり、摂食時(147.58±33.54m)に比べて、移動時(80.61±5.17m)、休息時(72.06±21.12m)が有意に小さくなった(P=0.01)。受信可能範囲が2つ以上重なる区域で測位したポイント(65.34±24.76m)は、受信可能範囲が1つ以下で測位したポイント(102.25±39.05m)より測位誤差が小さかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
まだ大きな測位誤差はあるものの、現在のハードウェア条件における放牧牛のリアルタイム監視装置はほぼ完成した。しかし、総務省が定めた電波法により、動物に装着できる発信機の周波数は5チャンネルしか与えられておらず、本システムにおいては、電波の混線を防ぐため、隣接するチャンネルの発信機は装着しなかった。すなわち、1,3,5の3つのチャンネル(=周波数)を用いた。 今後、放牧牛の管理、位置測位を行うにあたり、牛群の中心となる個体を見出し、その個体に発信機を付けることにより、牛群全体の位置情報等を把握することができると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
システムの構築はほぼ完了した。25年度は、放牧牛全体に発信機を装着することがハードウェア上、また、電波法上、困難なことから、発信機を装着するに値する牛群の中心個体、すなわちハブ個体を見出すべく、牛群をソーシャルネットワーク解析することにより、当該個体を見出す。そして、その個体が判明された後、発信機を装着し、2つ以上の受信機局で測位できる好条件下において、本システムを用いた放牧牛の測位を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
一部、得られたデータのうち、明らかにエラーと思われるデータを削除できるようなソフトウェアの改良を行う。 また、第47回国際応用動物行動学会議に出席し、行動データや放牧牛の位置データ把握に関する世界的な動向、知見を収集する。 発信機装着牛を見出すべく、放牧牛のソーシャルネットワーク解析の調査に適当な牛群を所有する農家で調査を行う。その際、1人での調査は物理的に不可能なので、研究補助者を雇用し、より多くのデータを集める。
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