2013 Fiscal Year Research-status Report
放射性セシウムの牧草汚染の実態調査と畜産物への移行モデルの開発
Project/Area Number |
24658227
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
廣岡 博之 京都大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (60192720)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
築城 幹典 岩手大学, 農学部, 教授 (10292179)
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Keywords | 放射性セシウム / 放牧地 / モデル / シミュレーション / 移行係数 |
Research Abstract |
本年度は,第1に,福島第1原子力発電所の事故から3年目を迎えたこともあるので,わが国におけるウシと放射性セシウムの関係を調べた研究報告を網羅的に調べ,モデルに重要と思われる研究を集めた。第2に,牧草地における放射性セシウム動態モデルについて検討した。このモデルはシステムダイナミックスに基づいており,レベルとしては,土壌中の放射性セシウム量(Bq m-2)を取り上げた。牧草への放射性セシウム移行に影響する要因としては,放射性セシウム沈着量,土壌中の粘土含量,有機物含量,交換性カリ含量, pH,土壌溶液中アンモニウム含量を取り上げた。牧草への放射性セシウム移行量(Bq m-2)は,土壌溶液中放射性セシウム濃度(Bq dm-3)と濃縮係数(CF,dm3 kg-1)および収量(kg m-2)の積で求めることとした。土壌溶液中放射性セシウム濃度とCFは,Absalom et al.(2001)のモデル中の式を用いた。ディスク耕などによる撹拌は粘土への吸着速度(D)が高まることとした。表土除去や反転耕などの除染は,循環系から放射性セシウムが除かれるとした。放射性セシウムの半減期は30.17年とした。モデル作成には,Vensim PLE Version 6.0b(Ventana Systems Inc.)を用いた。さらに,このモデルとは別に,より適応範囲の広い汎用モデルの開発も行っている。また,これまでのシステムアプローチを用いてウシ生産における放射性セシウムの蓄積量や排出量を予測した研究を概観し,解説論文として,日本畜産学会報に投稿した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
放射性セシウムの土壌、牧草、家畜の循環をモデル化することに成功した。このモデルは応用範囲が広く、様々な生産形態(肉牛繁殖、肉牛肥育、酪農など)にも応用可能である。また、学会報告を積極的に行い、高い評価を得ている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、実際にシミュレーションを行い、土壌の放射性セシウムの汚染度によって牧草や家畜体への蓄積がどうなるかを調べる予定である。さらに、牛肉や牛乳中の放射性セシウムの濃度を低下させるためのさまざまな方策の事前検討を本モデルを用いて行いたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初、研究フィールドに予定していた場所が、利用困難になり、モデル評価のための実データの収集が次年度になった。また、投稿論文などの執筆が遅れたため、次年度に英文校正やページチャージに使用したい。 英文校正とページチャージおよび成果報告書の作成。
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