2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24658229
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Research Institution | Kyoto Prefectural University |
Principal Investigator |
牛田 一成 京都府立大学, 生命環境科学研究科(系), 教授 (50183017)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井上 亮 京都府立大学, 生命環境科学研究科(系), 講師 (70443926)
塚原 隆充 京都府立大学, 生命環境科学研究科(系), 研究員 (90562091)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 繁殖母豚 / 歯茎炎症 / TNF-α / 産仔低成長 |
Research Abstract |
ヒトでは慢性炎症の1種として歯周病が注目されており,歯周病悪化によって糖尿病やエイズウイルス感染などの慢性疾患が悪化する。養豚では,ある一定の時期に母豚の繁殖成績の低下や産仔の発育不全が見られるが,予備研究で歯茎に明確な炎症を起こした母豚が確認できたので,繁殖母豚の歯茎炎症と産仔の成績の関係について検討した。 産歴0~2産の繁殖母豚14頭を実験に供試した。分娩後,産仔の成長を調査し,離乳後に母豚を剖検した。口腔内を肉眼的に観察し,歯茎の炎症を確認した。炎症部位が採取できるように下顎を切断し,採取した試料全体をホルマリン固定した。また,唾液,血液及び尿を採取し,冷凍保存した。肉眼的に炎症を明確に確認できた個体は2頭だった。ヒトの歯周病では唾液中のTNF-αが特徴的に増加するため,母豚歯茎中のTNF-α mRNA,及び唾液,血液及び尿中のTNF-α濃度を測定した。その結果,歯茎炎症を示す2頭については,歯茎中のTNF-α発現が高値を示し,唾液中のTNF-α濃度も高値を示した。一方で,歯茎組織の病理組織学的検査から炎症は確認できたものの,ヒトの歯周病に特徴的な歯槽骨の吸収等は確認できなかった。一方で,炎症部位の歯の下から新しい歯が生えてきていることが確認でき,乳歯の抜け替わりによる炎症である可能性が疑われた。歯茎に炎症を起こしていた母豚とそれ以外の母豚では,一般的な臨床状態や飼料摂取量に変化は認められなかったが,歯茎炎症母豚からの産仔は,他の産仔と比較して,産仔頭数に差がない状態でも成長が著しく不良であり,14日齢までの平均体重が正常仔豚よりも約1 kg低下した。ヒトの歯周病患者でも,哺乳児の発育が不良になるという報告があり,ブタでも歯茎が炎症を起こしている状態では産仔成長に大きく影響を及ぼしている可能性が考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
繁殖母豚が歯茎に炎症を起こしているかどうかを確認したうえで,歯茎炎症母豚の産仔が発育不良をおこすことについても確認できたため,当初計画は順調に推移していると判断する。一方で,今回確認できた歯茎の炎症が,ヒトでいう「歯周病」が示す病態を取っておらず,乳歯の生え換わりであると推察した。産歴が浅い母豚に特有の現象である可能性もあり、今後は,高産歴母豚を中心に調査を継続し,ヒトでいう歯周病と同じ病態を示す母豚がいるかどうかを確認する。
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Strategy for Future Research Activity |
24年度では,歯茎に炎症を起こしている母豚を確認し,それらの母豚が分娩した仔豚の発育が著しく不良になることが確認できた。一方で,24年度に供試した初産及び低産歴母豚の歯茎炎症は,ヒトで言う歯周病とは異なる病態にあると考えられた。以上より,本年度は高産歴母豚について検討を行う。昨年度まで評価では,産仔の増体や臨床症状については評価したが,仔豚の血液や母乳についてはサンプリングしていなかった。本年度は,仔豚への影響についても詳しく検討したいため,仔豚の採血及び搾乳も実施する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
基本的に、24年度同様に物品費(消耗品)で支出を予定している。25年度は、生産農場での調査を予定するので、旅費および人件費の発生を想定している。
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