2012 Fiscal Year Research-status Report
病原因子遺伝子情報を用いたジビエの食中毒危害微生物の解析と検査法
Project/Area Number |
24658230
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | National Institute of Health Sciences |
Principal Investigator |
小西 良子 国立医薬品食品衛生研究所, 衛生微生物部, 部長 (10195761)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | ジビエ / 食品危害物質 |
Research Abstract |
平成24年度は主にジビエ肉中に存在する食中毒病原性微生物検出法の確立を行った。これまで食肉中の病原微生物の検出は、目的とする食肉中に存在する微生物を培養し、個体として検出する方法や、微生物の保持する遺伝子を標的として特異的に増幅・検出するPolymerase Chain Reaction(PCR)法等が用いられている。しかし、これらの方法は、現時点で家畜に分類されていないジビエにはまだ適用されていない。また、各検出法にはそれぞれ欠点があり、前者については食品中に存在する微生物を寒天培地上で目視確認できるまでに数日を要し、後者では前者に伴う時間的問題は解消される反面、複雑な手順と高額な機器を必要とするため、遺伝子検査に精通した実施者が求められる点で汎用性に欠ける。そのため、本年度の研究では既存の方法に加えて昨今その簡便性と感度の高さで注目されているLoop-Mediated Isothermal Amplification(LAMP法)を用い、ジビエを対象とした食品中病原微生物の検出法を検討した。 病原細菌は、食中毒起因菌の代表的なものとして、腸管出血性大腸菌(EHEC)、Salmonella属菌、Listeria monocytogenes、Campylobacter jejuniの4種類を対象とした。遺伝子検出法での標的遺伝子は、それぞれVero毒素遺伝子、侵入性関連遺伝子invA、侵入性関連遺伝子iap、酸化酵素遺伝子とした。ジビエ肉は北海道、長野県、静岡県での管理捕獲により得られた鹿肉を用い、対象の菌種について陰性であることを事前に確認した。 今年度においては、EHEC、Salmonella属菌、L. monocytogenes、C. jejuniの4菌種についてはジビエ肉中の各種病原菌を遺伝子検査により迅速かつ簡便に検出出来ることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度では、ジビエ肉中に存在する食中毒病原性微生物検出法の確立を行った病原細菌の検出法としては一般的に行われている方法はPolymerase Chain Reaction(PCR)法等であるが、これらの方法は、現時点で家畜に分類されていないジビエにはまだ適用されていない。そのため、本年度の研究では既存の方法に加えて昨今その簡便性と感度の高さで注目されているLoop-Mediated Isothermal Amplification(LAMP法)を用い、ジビエを対象とした食品中病原微生物の検出法を検討した。 病原細菌は、食中毒起因菌の代表的なものとして、腸管出血性大腸菌(EHEC)、Salmonella属菌、Listeria monocytogenes、Campylobacter jejuniの4種類を対象とした。遺伝子検出法での標的遺伝子は、それぞれVero毒素遺伝子、侵入性関連遺伝子invA、侵入性関連遺伝子iap、酸化酵素遺伝子とした。ジビエ肉は北海道、長野県、静岡県での管理捕獲により得られた鹿肉を用い、対象の菌種について陰性であることを事前に確認した。また、近年しか肉等で寄生が問題となっているザルコシスティスによる食中毒も検査法から検討した。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の食中毒細菌についての実験結果から、鹿肉試料に各菌種を100CFU/mL~105CFU/mLの濃度で添加し、各種選択寒天培地での培養、PCR法およびLAMP法を行い各々の検出感度を検討した結果、少なくとも約24時間程度を要する寒天培地培養法に比べ、PCR法およびLAMP法を用いた遺伝子検出法では数時間で検出出来ることが確認された。また、LAMP法とPCR法の比較において両検出法で同等の結果が得られた。来年度からは、実際のジビエの実態調査を行う。この結果から、我が国ではどの食中毒細菌が汚染しやすいかを明らかにしその検査法をさらに検討する。と同時に近年馬肉で食中毒原因物質として発見されたザルコシスティス(寄生虫)がシカにおいて高い確率で寄生していることが報告され、シカ肉の不十分な加熱調理から食中毒事例も報告されている。また、E型肝炎ウイルスの感染も問題となっている。これらの背景から、今年度検討した食中毒細菌に加えて、ザルコシスティスおよびE型肝炎ウイルスを検出できる簡易法を開発し、実態調査と併せてその汚染について検討する。最終的には一斉分析により、ジビエの衛生管理に必要な危害物質を検出できる系を確立する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
来年度は、ザルコシスティス(寄生虫)とE型肝炎ウイルスを核酸クロマトグラフィーで検出できる方法を開発するため、消耗品を 40万円計上した。 次に、この事業でいられた新測定荘も含めて、実態調査をおこなう。北海道、長野県、静岡県から、シカ肉をすでに確立した食中毒細菌をLAMP法およびPCR法で、実態調査をおこなうため、 サンプル代をいれて消耗品を 30万円計上した。 成果発表のため 国内外学会発表およびサンプル収集のための旅費として 40万円、論文校正代 10万円を計上する。
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Research Products
(1 results)