2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24658240
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Research Institution | 大学共同利用機関法人情報・システム研究機構(新領域融合研究センター及びライフサイ |
Principal Investigator |
後藤 達彦 大学共同利用機関法人情報・システム研究機構(新領域融合研究センター及びライフサイ, 大学共同利用機関等の部局等, 研究員 (30619391)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 行動学 / 遺伝学 / ゲノム / 動物 / 畜産学 |
Research Abstract |
(1)従順性の系統差ならびに遺伝率; 本研究では、野生由来の近交系マウスの10系統(MSM, HMI, BLG2, PGN2, KJR, CHD, NJL, BFM/2, SWN,ならびにCAST/Ei)、日本の愛玩マウス1系統(JF1)ならびに、実験用マウス6系統(C3H, C57BL/6, CBA, DBA/2, BALB/c, 129)の計17系統を対象にした。各系統の雄それぞれ12個体、計204個体を用いて、6週齢および8週齢の2時点で行動解析を行った。マウスの従順性に関わる行動を評価するために、以下の3種のハンドリングテストを考案した。Active Tame Testでは、手に対するマウスの自発的な従順性行動を、Passive Tame Testでは、手に対するマウスの受動的な従順性行動を、Stay on Hand Testでは、強制的な刺激に対するマウスの従順性行動を評価した。分散分析の結果、全ての形質に関して、有意な系統差が認められた(p < 0.001)。これに加えて、広義の遺伝率を算出したところ、15-72%は遺伝要因に依ることが明らかになった。 (2)高密度SNPデータに基づいた系統解析; 近交系マウス9系統(MSM, HMI, BLG2, PGN2, KJR, CHD, NJL, BFM/2, ならびにSWN)の高密度SNPタイピングを行うために、9系統の3個体ずつ、計27個体を対象に、illumina社の高密度SNP Genotyping Arrayを使用し、計77,800 SNPsの遺伝子型を決定した。残りの8系統のSNP情報は、データベースを参照し取得した。系統解析の結果、国立遺伝学研究所が保有しているオリジナルな野生由来の近交系マウスは、既存の資源とは異なる遺伝的背景を有することが確認され、生物資源としての利用価値が高いことが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)従順性の系統差ならびに遺伝率; 国立遺伝学研究所が保有しているオリジナルな野生由来の近交系マウスを含む、計17系統のマウスを用いて、従順性行動の表眼型解析を予定していたが、計画通り、今年度中に終了することができた。 (2)高密度SNPデータに基づいた系統解析; 近交系マウスの高密度SNPの解析を予定していたが、計画通り、順調に進み、系統解析を行うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究によって、マウスの従順性行動は、その遺伝率が15-72%と推定され、体重等の形質と同様に、複数の遺伝子座によって支配され、環境にも影響されるといった、典型的な量的形質であることが明らかになった。また、SNP解析より、国立遺伝学研究所が保有しているオリジナルな野生由来の近交系マウスは、既存の資源とは異なる遺伝的背景を有しており、生物資源としての利用価値が高いことが明らかになった。今後、これらの遺伝資源を有効に利用した集団を基にして、量的形質遺伝子座マッピングを遂行する予定である。これによって、マウスの従順性行動に関する複雑な遺伝的基盤の理解が進むものと期待される。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
現在のところ、国立遺伝学研究所が保有しているオリジナルな野生由来の近交系マウスを有効に利用したマッピング集団を樹立し、行動解析を進めている。従順性行動に関わる量的形質遺伝子座マッピングを遂行するためには、これらの集団に属する多数の個体のSNPデータが必要となる。これまでにその有用性が確認されたillumina社の高密度SNP Genotyping Array(計77,800 SNPs)を用いて、マッピング集団に属する230個体を対象にSNP解析を行う予定である。その後、これらの行動データとSNPデータを基にして、ゲノムワイドな関連解析を行うことによって、マウスの従順性行動に関与している遺伝子座が多数同定されるものと期待できる。
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