2012 Fiscal Year Research-status Report
ベンブローク・ウェルシュコーギー犬における組織球異常のゲノム解析
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24658263
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
内田 和幸 東京大学, 農学生命科学研究科, 准教授 (10223554)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | イヌ / 組織球性肉腫 / 病因遺伝子 |
Research Abstract |
平成24年度は、コーギー犬の組織球性肉腫の髄膜腫瘍より培養細胞が分離され、現在株化が行われている。第10代を超えて継代されている。本細胞はゴールデンレトリーバーより分離・株化された組織球性肉腫由来の細胞株と形態的特徴や免疫組織化学的性状が類似しており、本研究により腫瘍化に関連する遺伝子が同定されれば、同遺伝子の機能より標的分子を絞り込むことが可能で、in vitroにおける標的薬の開発に有用なツールとなると期待される。 原因遺伝子の特定については、これまで次世代型シークエンサーによるゲノム解析で判明した候補遺伝子のうち、BMXについてその可能性が高いと考えていたが、その後の追試験により現在イヌの標準遺伝子情報とされているボクサー犬のBMXの塩基配列がむしろ特殊であり、コーギー犬を含む複数の犬種では、コーギー犬と同様の塩基配列をもつことが判明した。このため、次世代型シークエンサーのデータを再調査する必要がでている。BMX遺伝子以外にも複数の候補遺伝子が存在するため、これらの遺伝子についての検証も合わせて実施した。またゴールデンレトリーバーの組織球性肉腫性肉腫の細胞株でBMX等の病因遺伝子をノックダウンし、組織球性肉腫の増殖により密接に関連する遺伝子を確認した。本研究の成果は獣医内科学アカデミーで口頭発表を行い一部の結果を公表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
次世代型シークエンサーより得られた結果よりコーギー犬の組織球性肉腫の病因遺伝子を一つに絞りこむことができたが、その後の追試により、現在世界的にイヌゲノムのスタンダードとされているボクサー犬の遺伝子配列が特異であることが判明し、候補遺伝子の再検討が余儀なくされた。しかし本年度にコーギー犬の組織球性肉腫の培養細胞が得られ、株化の見込みが立ったため、今後の研究に大いに活用できると考えている。このため、おおむね平成24年度の研究目的については順調に達成できていると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、次世代型シークエンサーの結果を再検討しており、コーギー犬の組織球性肉腫の病因遺伝子の絞り込み条件を複数変更し実施しているため、この結果にもとづき候補遺伝子の変異の国内におけるコーギー犬における浸透状況、発症犬における変異率などを調査する。また昨年度に分離した培養細胞を株化し、in vitroにおける候補遺伝子の発現状況の確認を行う。また分子カスケードの解析により予想される増殖亢進機序を解明し、同カスケードをブロックすることにより培養細胞の増殖が抑制されること、またSCIDマウスなどへ移植した腫瘤が消失することなどを確認する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度も本年同様、抗体や培養細胞系の確立等に関連する消耗品のみを使用する。培養系がほぼ確立できているので、SCIDあるいはNudeマウスなどの免疫不全マウスを移植実験用に購入する予定である。
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