2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24658269
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
永延 清和 宮崎大学, 農学部, 教授 (40264353)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 角膜実質 |
Research Abstract |
(1)ブタ膀胱由来で無細胞化・滅菌化された材質を、ラット角膜の上皮全層と実質を部分的に剥離した部分(直径3 mm)に移植すると、移植部は次第に透明化し、約12週間目には肉眼的には判別できない程度の透明性を得た。この時、移植片は10-0ナイロン糸で角膜に縫合したが、抜糸を1週間目に行った時は、4週間目に行った時よりも、肉眼的な透明性が高まるのが速かった。これは組織学的所見とも一致していた。したがって、角膜混濁の一因としてナイロン糸に対する角膜の反応の関与があると思われた。一方、移植後3日目の観察で、一部角膜上皮が移植片の下側(角膜実質側)に進展している像がみられた。これからは、角膜上皮の下で角膜実質が再生した可能性も考えられ、移植片が角膜実質再生の足場として機能し、移植片に角膜実質の細胞が侵入して再生したのか疑問が生じた。そこで、ウサギを用いた実験を次に行った。 (2)ウサギを用いて同様の実験を行った。ウサギの角膜の上皮全層と実質を部分的に剥離した部分(直径5 mm)に上述の移植片を移植した。移植後8週目では、移植部が肉眼的に透明性が増した個体と、移植部の混濁部が混濁したままではあるが縮小した個体とが認められた。移植後3日目および7日目のフルオレセインを用いた角膜染色では移植部が部分的あるは全体的に染色された。このことから、移植片上への上皮の進展が不十分あるいは欠如している可能性があった。しかし、移植後3日目および7日目の組織学的観察ではともに、角膜上皮は移植片の外側(角膜実質側ではない部分)上に進展していた。このことから、移植片内に角膜実質細胞が侵入して、角膜実質の再生が起きていることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の計画では平成24年度中にイヌを用いた実験、およびラットを用いた同種角膜移植との比較に関する実験を行う予定であった。しかし、ラットを用いた実験で、角膜上皮の下で角膜実質が再生した可能性も考えられた。もしこのような機序で再生したのであるならば、移植片は、角膜損傷部を単に被覆して物理的に保護しているのみであり、移植片が角膜実質再生の足場として機能して移植片に角膜実質の細胞が侵入して再生しているのではないことになる。したがって、この点を明確にするためにウサギを用いた実験を追加した。ウサギはラットよりも角膜が厚いため、より深い角膜の上皮全層と部分的実質剥離モデルを作成しやすく、移植片をより深層まで埋め込む事が可能であるからである。さらに、当初は移植片がどの程度の期間で生着するかは不明であったので、ラットの実験で当初は抜糸までの期間を4週間としていた。しかし、縫合糸に対する角膜の反応が角膜混濁の一因である可能性が組織学的検査から考えられた。そこで、この点を確認する目的で、抜糸までの期間を1週間と短縮して透明性を評価するラットの実験を追加した。これにより、縫合糸に対する角膜の反応が角膜混濁の一因である可能性が強まった。以上の2点は今回の移植実験を評価する上で非常に重要な点と考え、これらの点を確認する実験を当初の予定にはなかったが追加した。こうした理由のため、イヌを用いた実験等に至っておらず、当初の計画よりやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)ウサギの角膜に、ブタの膀胱や角膜由来の移植片と、ウサギの角膜由来の移植片を移植して、どれが最も良いかを評価する。具体的には、これまでの成果を踏まえて、ウサギの角膜の上皮全層と実質を部分的に剥離した部分(直径5 mm)に上述の移植片を縫合する。抜糸後十分な期間を開けて、移植部の透明性の評価や組織学的評価、超音波診断装置を用いた評価(UBM、特に混濁部に対して)を行う。 (2)よりすぐれていると思われる移植片を、ウサギやラットの疾患モデル等に対して使用する。ウサギやラットでは涙腺摘出ドライアイモデルが作られている。イヌのドライアイでは涙腺の異常により涙量が減少するタイプのドライアイは多いため、ウサギやラットのこれらのモデルはイヌのドライアイに類似の病態となり得ると考えた。イヌではドライアイは多く、またドライアイでは角膜治癒機構が異常である可能性があるため、これらの病態でも移植が可能かを知る必要がある。 (3)イヌの角膜に対して、それまでに見出した素材を移植して評価する。 (4)他の素材を評価する。例えば、Porous Silk Fibroin filmは角膜上皮シート作成に使用された論文があるが(J Biomater Sci Polym Ed. 2010 Nov 19.)、多孔質で細胞が侵入しやすい特徴があり、さらに長期的にはため、角膜実質にも応用可能と考えた。この素材を用いて、まずラットに上述の移植実験を行い、うまくいけばイヌで試験する。また角膜上皮細胞を培養し、これまでに見出した素材と組み合わせて表する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
主に次のものに使用する。(1)実験動物(ウサギ、ラット、イヌ)の購入および飼育。(2)組織学的検査に必要な染色液や抗体。(3)移植手術に必要な器具・機材。
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