2012 Fiscal Year Research-status Report
アミロプラスト分化マスター遺伝子の同定による植物バイオマスの革新的改変
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24658271
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
高橋 秀幸 東北大学, 生命科学研究科, 教授 (70179513)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | バイオマス / アミロプラスト分化 / コルメラ / シロイヌナズナ / タバコ / オートファジー / マーカー遺伝子 / デンプン |
Research Abstract |
当該年度は、レポーターとして用いる遺伝子のスクリーニングを、公共のシロイヌナズナトランスクリプトームデータベースを参照しながら行った。データベースにあったデンプン合成、分解に関与する51遺伝子について、発現量の数値をリスト化した。次に、シロイヌナズナ根においてデンプンを多く蓄積しているコルメラ細胞で最も強く発現している遺伝子をリストアップしたところ、上記51遺伝子のうち、19遺伝子が該当した。これら19遺伝子は、どれも類似した発現プロファイルを示し、多くの遺伝子がコルメラで最大の発現量を示し、その他の根の組織ではほとんど発現していないことがわかった。これら遺伝子の中には、タバコ培養細胞でアミロプラスト分化状態と強い相関を持つADP-glucose pyrophosphorylase small subunitやglucose-6-phosphate translocatorをコードする遺伝子が含まれていた。したがって、これら24遺伝子は、当研究で同定しようとしているアミロプラスト分化マスター遺伝子によって厳密に制御されていることが強く示唆された。さらに、プロモーターデータベースから、これら19遺伝子のプロモーター領域において調節に関与すると推定されるシス配列の推定を行った。しかしながら、すべての遺伝子に共通するシス配列は見つからなかった。この原因として、19遺伝子の中に擬陽性の遺伝子が含まれている可能性が考えられたため、現在、スクリーニングにより得られた19遺伝子それぞれについて、デンプンの蓄積状態を変化させた状態での発現レベルをRT-PCRを用いて検証している。環境応答依存的なアミロプラスト分化状態の制御機構についても解析を行い、シロイヌナズナの根において水ストレス応答過程で生じるデンプン分解がオートファジーによって起こる可能性を見いだし、Planta誌に発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度は、アミロプラスト分化マーカー遺伝子のスクリーニングをシロイヌナズナゲノム上のデンプン代謝に関わる遺伝子群より行った。マイクロアレイデータベースを用いた解析から、デンプン貯蔵細胞を密接に関連した発現を示す遺伝子の抽出に成功した。これらのプロモータ領域には今のところ共通するシス配列は見いだせていないものの、この中には、タバコ培養細胞においてアミロプラスト分化状態に依存した発現変動を示す遺伝子の相同遺伝子が含まれていた。結論は詳細な発現解析の結果次第と言えるものの、現段階では、マーカー遺伝子のスクリーニングは精度良く進められたものと考えられる。こうしたことから、現在まで研究はおおむね順調に進んでいるものと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、シロイヌナズナを用いてアミロプラスト分化状態をモニターできる、マーカー系統の樹立を行う。次に、変異原処理を行い、マーカーの発現が異常になる突然変異体のスクリーニングを実施する。また、これまでの解析により、タバコ培養細胞においては、アミロプラスト分化・脱分化状態のタイムコースを理解している利点を生かし、分化・脱分化の初期段階でのトランスクリプトーム解析も実施することを計画している。方法としては、既製品のマイクロアレイやRNA-seqを考えている。RNA-seqの場合は、タバコ、トマト、ジャガイモといったナス科植物のESTゲノムデータベースのアノテーション等を参照して、結果の絞り込みを行う。そして、マスター遺伝子候補が得られたら、シロイヌナズナのノックアウト系統やタバコ培養細胞のアミロプラスト分化誘導系を用いてその機能の検証を行う。そして、アミロプラスト分化のマスター遺伝子を同定する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
現段階では、備品の購入計画は無い。必要となる消耗品としては、植物培養と育成、生理実験に必要な試薬や器材、および遺伝子クローニング、遺伝型判定、発現解析等に必要となる試薬、器材が主になる。また、研究成果報告のための旅費の支出も計画している。その他、研究支援ならびに論文執筆、投稿および出版に関わる経費にも支出を計画している。さらに、今後の結果次第では、トランスクリプトームデータのデータマイニングに必要な経費が生じることも考えられ、これについては必要に応じて適宜支出していく予定である。
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[Journal Article] A possible involvement of autophagy in amyloplast degradation in columella cells during hydrotropic response of Arabidopsis roots2012
Author(s)
Nakayama M, Kaneko Y, Miyazawa Y, Fujii N, Higashitani N, Wada S, Ishida H, Yoshimoto K, Shirasu K, Yamada K, Nishimura M, Takahashi H
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Journal Title
Planta
Volume: 236
Pages: 999-1012
DOI
Peer Reviewed