2013 Fiscal Year Research-status Report
アミロプラスト分化マスター遺伝子の同定による植物バイオマスの革新的改変
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24658271
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
高橋 秀幸 東北大学, 生命科学研究科, 教授 (70179513)
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Keywords | アミロプラスト / 分化 / 脱分化 |
Research Abstract |
平成24年度に、アミロプラスト分化マーカー遺伝子のスクリーニングを実施したことをもとに、25年度はスクリーニングに用いる分化・脱分化誘導系の検討を行った。シロイヌナズナの根端アミロプラスト中のデンプンは、水分勾配をはじめとした水ストレスにより分解されることが明らかにされていた。この知見をもとに、通常の培地で生育している芽生えを、0.4Mマンニトール溶液を用いて浸透圧刺激を与えたところ、デンプンの顕著な分解、すなわち、アミロプラストの脱分化が認められた。デンプンの減少は、処理後1時間目には処理前の30%程度まで落ち、4時間目までほぼ一定であった。また、デンプンの減少は、0.011Mマンニトール溶液や蒸留水の処理でも認められたが、減少のタイムコースが緩慢で、有意なデンプンの減少は処理後4時間目にならないと認められなかった。このことから、0.4Mマンニトール処理により、芽生えが積極的にデンプンを分解していることが強く示唆された。次に、デンプンの再蓄積の条件について検討した。0.4Mマンニトール液で処理した芽生えをそのまま処理し続けた芽生えと、0.011Mショ糖を含むMS培地(以下MS培地)に移し替えた芽生えとに分け、経時的に根端のデンプン量を追跡した。その結果、0.4Mマンニトール溶液で処理し続けた個体の根端アミロプラストのデンプンは分解されたままであったが、MS培地に移した芽生えでは、根端のデンプン量の有意な上昇が処理後1時間目より観察され、培養4時間目で、ほぼプラトーに達することが明らかになった。このことから、脱分化スクリーニング系として、0.4Mマンニトール溶液処理を4時間行うこと、再分化スクリーニング系として、デンプンを焼失させた個体をMS培地で4時間処理することが適当であると判断された。また、25年度中に形質転換用のレポーターベクターを完成させた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度中に選抜した遺伝子をもとにレポーター系統樹立のためのコンストラクションを25年度に完成させることができた。さらに、前述のようにスクリーニングで最も重要となる、スクリーニング系を確定させることができた。現在進めている、レポーター系統の樹立ができれば、突然変異体のスクリーニングだけでなく、植物生産力を最大化させるような環境要因の同定にも使うことができる。さらに、各種薬剤を用いた生理学的解析からも、植物のアミロプラスト分化・脱分化機構に機能する生体分子の同定と解析が可能になると期待される。これにより、当初の目的に向けて進めることができていると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は、レポーター系統の樹立とともに、その有用性を検証しながら、突然変異体スクリーニングを実施する。研究期間の制約から、レポーター系統の有用性の検証と、突然変異体スクリーニングは並行して実施することになる。さらに、得られた突然変異体については、研究期間内にできる限り変異原因遺伝子の同定に近づけるよう解析を進める。さらに、レポーター系統を用いて、種々の環境要因を調節した環境下での発現をモニターし、植物の生産力を最大化させる環境要因の解析を実施する。また、環境応答異常突然変異体との交配も実施し、環境応答異常がもたらす植物生産力低下のメカニズムを明らかにする。これらの解析により、最終的に、植物生産力を決定づけるマスター因子を同定する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
物品費については当初の予定通り執行し、研究を実施したが、予定していた成果発表および情報収集のための旅費、謝金分を使用できなかった。 次年度使用額分は翌年度請求分と合わせて、研究の遂行および取りまとめに必要な物品費として使用するとともに、謝金分を使用して研究支援を充実させ、また、研究成果の発表に重点をおいて、旅費として使用する計画である。
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