2013 Fiscal Year Research-status Report
サツマイモの「つるぼけ」特性を活用した土壌セシウムの吸収浄化と回収植物体の処理
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24658279
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Research Institution | Prefectural University of Hiroshima |
Principal Investigator |
増田 泰三 県立広島大学, 生命環境学部, 准教授 (30347611)
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Keywords | 環境浄化 / サツマイモ / つるぼけ / 土壌セシウム |
Research Abstract |
原発事故で放出され半減期が30.2年のセシウム(Cs)-137は、集積した農地土壌等からの除去が必要である。浄化用植物には高い吸収能と大きなバイオマスが必要で、つる性であるがサツマイモを用いた。サツマイモは窒素(N)やカリウム(K)吸収能が高く土壌からの収奪量も大きい。施肥Nが多いと吸収Nも増加して茎葉生育が促進され、塊根は肥大せず「つるぼけ」となり、塊根肥大のためにK要求が高くなる。この特性を活用し、Kと化学的性質が類似しているCs吸収を行うことが可能と考えた。 砂質の真砂土畑圃場でコガネセンガンを用い、K少肥でNを標準から多肥として非放射性Csを表層施用して栽培を行った。コガネセンガンはつるぼけし難く塊根は多収で500kg N/ha以上の施肥で塊根生育が停滞し、つるぼけ状態となりCs吸収量も大きかったが、大部分が塊根に集積した。 粘土質のグライ土畑圃場に500kg N/haとK無施肥で、コガネセンガンを用いて畦立てとマルチ、鳴門金時を用いて種イモ直播の影響を調査した。マルチ下表層土に細根の密生が認められたが、表層集積したCsが畦立て時に拡散したため吸収増加は認められなかった。Cs吸収は平植えでも大きくマルチによる増加が期待できる。直播は移植栽培より省力化が可能であるが親イモ肥大が大きく地下部および全植物体のCs集積は同等であった。 Csを吸収させたサツマイモ茎葉を用い、850℃で1時間の加熱によるフロー解析と植物体の交換態イオン抽出法を用いた抽出処理に対する試料の乾燥度合いと粉砕程度や酸濃度を検討した。茎葉乾物試料は燃焼で重量は1/10になったがCsの64%が飛灰となり、主灰のCs濃度は3倍になった。焼却による減容化処理ではCs飛散防止対策が不可欠である。1M塩酸での1時間振とう後の放置でCs抽出は新鮮物で60%、その他は80%程度で風乾物細断処理が適切と考えられた。酸濃度の上昇で抽出割合は低下した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
生育が旺盛でバイオマス生産の大きい品種である「コガネセンガン」を用いて実験を行ってきたが、コガネセンガンはつるぼけをし難い品種で、標準施肥Nの10倍程度では初年度につるぼけを起こさせることができなかった。今年度の実験では15倍や30倍程度で塊根生育の停滞が起こり、つるぼけ状態となったが塊根は形成され、吸収したCsの大部分が地下部の塊根に集積した。一方で、土耕ポット栽培で茎葉利用葉取りサツマイモのヘルシー菜で「すいおう」という品種のポット苗を用い、K少肥でNを標準から多肥として非放射性Csを表層施用して栽培を行った。250kg N/ha以上の施肥で地上部の茎葉が地下部の塊根等の生育割合を上回ってつるぼけ状態となり、Cs吸収は500kg N/haで最大で、塊根が形成されずCsは地上部へ移行集積した。次年度は、本実験の目的に適すると考えられる品種を用いて砂質と粘土質の畑圃場で実験を行う。 飛散して土壌に集積したCsの動態に関する研究報告等で、土壌中には水溶性2%・交換態8%・固定態90%といわれ、本実験の砂質と粘土質の土壌でも栽培後に土壌残存したCsは固定態と考えられる割合が著しく大きかった。粘土鉱物のバーミキュライト等が風化の影響を受け、層の末端がほつれてできるフレイドエッジサイトに特異的に捕捉される固定態のCsは、ほとんど植物に吸収されることはなく、再び風化の影響を受けて放出されなければ植物が吸収することはできないと考えられる。植物種によっては鉱物の構成成分(ケイ酸)ごと溶かしてK獲得が可能であるという報告があり、サツマイモはこの能力が高いとされている。Kが不足すると粘土鉱物に固定されたCsを吸収できる可能性があるが、風化の促進等について残念ながらまだ具体的な良いアイデアは無い。
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Strategy for Future Research Activity |
栽培作物の可食部への移行抑制対策に関する検討で、水稲でのケイ酸カリや塩化カリ等のKおよびゼオライトや有機質資材の堆肥等の土壌改良材施用の有効性が示され適用されている。一時的封じ込めにはなっているかもしれないが、残念ながら隔離にはならず農業従事者の不安が残される。放射性Cs降下から余り時間が経っていない段階ではフレイドエッジサイト以外の負電荷にもCsが吸着され高線量環境が問題になるため、吸収されて残存量が少なくなり効果が小さくなるエイジングもあるが、汚染原因成分の吸収が可能であれば除去を行う必要がある。 砂質や粘土質の畑圃場で非放射性Csを表層施用して、K少肥条件で標準から多肥までの数段階のN施肥を設定し、地上部が繁茂する茎葉利用サツマイモのヘルシー菜の品種である「すいおう」を栽培する。茎葉や細根および形成されていれば塊根を採取し、また栽培後土壌も採取してCs等を定量し、つるぼけ状態でのサツマイモのCs吸収浄化能を成分収支等から評価する。硫酸アンモニウムでの多量のN施用は土壌の酸性化を起こさせる危険性があるため、サツマイモが生育可能な土壌pHの範囲は広いと考えられるが、全量基肥と刈り取り追肥での状況を土壌pHのモニタリングを行って比較検討する。 飛散したCsの物質量は全量で5kg程度といわれ、物質量としては少ないが、Csの放射能が強いため問題視されることが多い。非放射性Csを用いて相当する極微量の物質量で実験を行うことは困難である。また、非放射性Csを用いた実験でBq単位が使われている移行係数算出式を用い、濃度単位データで評価すると移行係数は大きくなる等の問題点が明らかになってきた。しかし、表層を薄く剥ぎ取る除染でフレコンバック等に入れて仮置き場にある土壌や汚泥焼却灰等への対応を考えていくことができないかについて検討を継続する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
初年度に間接経費差し引き後の配分額では、購入費が物品費の90%を超えるため購入が不可となったので購入を諦めた備品により生じた次年度使用額と今年度も同等である。 次年度は、サツマイモのポット苗の購入や栽培用資材および分析と研究成果発表のために研究費を使用する。
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Research Products
(1 results)