2012 Fiscal Year Research-status Report
免疫応答回避性の糸状菌界面活性蛋白質の探索とその医療用ナノ粒子への応用
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24658281
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
阿部 敬悦 東北大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (50312624)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高見 誠一 東北大学, 多元物質科学研究所, 准教授 (40311550)
福本 学 東北大学, 加齢医学研究所, 教授 (60156809)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | バイオセンサー / 医療用ナノ粒子 / 免疫応答 / 界面活性蛋白質 / 糸状菌 / 免疫応答回避 / hydrophobin |
Research Abstract |
本年度は以下の4項目を実施した。 1.ステルス素材用新規界面活性蛋白質の探索~麹菌を種々の固体表面と接触培養を行うことで、固体表面に界面活性蛋白質を結合させて、それらを溶出後、分子量1万以下の蛋白質を同定した。主要な蛋白質は、既知のhydrophobin RolA、疎水表面結合蛋白質HsbAであり、さらに2種が見出され、麹菌での高発現と精製を試みている。 2.界面活性蛋白質によるナノ粒子の被覆~界面活性蛋白質の酸化鉄粒子への吸着要因(静電相互作用、疎水的相互作用)を精査するために、モデル界面活性蛋白質RolAの各種pHにおけるゼータ電位測定を行った。その結果、RolAはpH4付近でゼータ電位が無くなり、それ以上のpHでは負のゼータ電位を持つことを明らかにした。酸化鉄ナノ粒子も中性で負のゼータ電位を有するので、pH5付近で静電反発を抑制して吸着する条件を決定した。すなわち、対象とする粒子および界面活性蛋白質のゼータ電位を測定し、静電反発が抑制される条件で疎水的相互作用により吸着させる方法を提唱した。 3.界面活性蛋白質および粒子からのLPSの除去法の開発~免疫応答回避試験を行うにあたり、界面活性蛋白質および酸化鉄ナノ粒子へのLPSの混入が問題となることから、界面活性蛋白質はポリミキシンカラム処理、酸化鉄ナノ粒子はデオキシコール酸洗浄を行う方法を確立した。 4.界面活性蛋白質被覆ナノ粒子のマクロファージ貪食回避能の評価~これまでの予備検討では、酸化鉄ナノ粒子をRolAで被覆した場合、マクロファージの貪食回避が可能である。H24年度は、RolA被覆粒子の追加試験を行い、貪食回避能を再確認した。貪食能を定量的に評価するために、マクロファージを回収した後、細胞を濃塩酸で処理して細胞を溶解させると同時に酸化鉄ナノ粒子を可溶化し、原子吸光法でイオン化した鉄を定量する方法を確立した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度は、以下の4項目を実施し、1に若干の遅れはあったものの、ほぼ順調に進捗を達成した。モデル界面活性蛋白質RolA被覆ナノ粒子に関しては、順調に進捗し、日本農芸化学会2013年度大会のトピックス賞に選出された。 1. ステルス素材用新規界面活性蛋白質の探索~新規界面活性蛋白質の種類が予想よりも多くなく、既知の界面活性蛋白質の発現量が多いため、マイナーな新規界面活性蛋白質の分離精製に時間を要している。若干遅れ気味であった。 2. 界面活性蛋白質によるナノ粒子の被覆~界面活性蛋白質と粒子間の静電反発を、界面活性蛋白質および粒子のゼータ電位測定により、静電反発を最小限にするpH条件で被覆する方法を採用し、安定な被覆を達成した。予定の進捗を達成した。 3. 界面活性蛋白質および粒子からのLPSの除去法の開発~既知の界面活性蛋白質RolAを用いたLPS-free RolA被覆酸化鉄ナノ粒子作製法が確立できた。安定して、3のマクロファージ試験に粒子を供給できたので、予定の進捗を達成した。 4. 界面活性蛋白質被覆ナノ粒子のマクロファージ貪食回避能の評価~界面活性蛋白質被覆酸化鉄ナノ粒子のマクロファージ貪食試験を定量化する方法を確立した。順調に進捗を達成した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は、以下の5つの方針で進める。 1. ステルス素材用新規界面活性蛋白質の探索~界面活性蛋白質は、その界面活性の性質により蛋白質の生産量が上がらないことが予想される。種々の発現条件を検討する必要がある。特に発現抑制状態で菌体を生育させ、発現誘導を短時間で行う。 2. 界面活性蛋白質によるナノ粒子の被覆~H24年度に界面活性蛋白質および粒子のゼータ電位を制御して静電反発を抑制した条件で粒子を被覆する方法が確立できたので、新規の界面活性蛋白質にも、その方法を応用展開する。 3. 界面活性蛋白質および粒子からのLPSの除去~細胞試験とマウス固体試験を予定しており、被覆粒子へのLPSの混入を避けることが必須となる。H24年度に確立した蛋白質および粒子のLPS除去法に加え、被覆後の粒子懸濁液のLPS定量を行って、細胞試験、動物試験でのLPS混入を防ぐ。 4. 界面活性蛋白質被覆ナノ粒子のマクロファージ貪食回避能の評価~H24年度には、マクロファージに貪食された金属ナノ粒子を塩酸により溶解後、原子吸光で定量することが可能となった。この方法を用いて、5のマウス個体試験向けの被覆粒子のステルス品質を管理する。 5. 界面活性蛋白質被覆ナノ粒子のマウス個体での評価試験~3でLPS-free度、4でマクロファージステルス能の品質を評価した被覆粒子を用いて、マウス個体試験を行う。マウスにおける評価は。MRI-imagingと組織細胞における金属定量を併用する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
主に、界面活性蛋白質の精製用、LPS除去用の生化学消耗品、酸化鉄ナノ粒子製造用化成品の購入に使用する。また細胞試験用培地、マウス個体の購入にも充当する。一部、研究補助と、調査研究旅費にも充当する。
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