2012 Fiscal Year Research-status Report
遺伝子改変による産業用オイル・スクアレンを蓄積するユーフォルビア及びトマトの作出
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24658282
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
三浦 謙治 筑波大学, 生命環境系, 准教授 (00507949)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
野中 聡子 筑波大学, 生命環境系, 助教 (50580825)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | バイオテクノロジー / 遺伝子 / 植物 / 産業用オイル |
Research Abstract |
スクアレンはスクアレンシンターゼ(SS)によりファルネシル二リン酸から生合成される。また、スクアレンエポキシダーゼ(SE)によりスクアレンからステロールへの生合成が始まる。 本年度はEuphorbia tirucalliのEtSSを過剰発現させ、トマト内在性SEを抑圧するためのベクターを作製した。このベクターによってスクアレンをトマト内で蓄積させる目的である。また、EtSSを用いることで効率のよいスクアレンへの変換が期待できる。本年度、このベクターを用いてトマトへ形質転換を行い、形質転換体16体を得たが、次世代の種をつけたものはそのうち8体であった。この8体に関してはトマト種子を採取し、次年度、EtSSの発現をウェスタン解析により明らかにする予定である。計画ではファルネシル二リン酸のカロテノイド類生合成を止める目的でghost-like変異体(ファルネシルシンターゼに変異あり)を用いる予定であったが、ghost-like変異体は種子形成率が悪いため、今回は通常のトマトでの形質転換を行った。今後スクアレンを蓄積する個体とghost-like変異体を掛け合わせることで、スクアレンの更なる増産を行う。 E.tirucalliの形質転換法の開発であるが、不定芽を誘導することを本年度は主に行った。サイトカイニン量を調製することで1cm長の茎から不定芽らしきものが得られた。しかし、この不定芽をいくつかのホルモンを含む培地に移して植物個体への再生を試行したが、結局植物個体へと再分化するものは得られなかった。更にホルモンバランスを調整して再分化する不定芽の条件を検討する必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
形質転換トマトに関してはghost-like変異体ではなく、通常のトマトを用いたが、EtSS過剰発現とSlSE抑圧を同時に行うベクターの作製に成功し、形質転換植物体の作製も行っている。次世代の種をつける植物体の数が8個体と少なくなってしまったため、この8個体内で十分な発現をするものが得られるかは懸念材料である。ただ、16個体の形質転換植物が得られて、半分が種をつけなかったことを考えると、導入した遺伝子が何か影響している可能性も考えられる。8個体はその先の解析を行う材料とする。実際に遺伝子発現がうまくいっても、最終産物であるスクアレンの蓄積が見られなければこの方法自体を考え直す必要がある。その手がかりを得る意味でも8個体の更なる解析は必要である。一方で、8個体の解析を進めつつも、個体数を増やすことも考慮する必要が考えられる。形質転換を行うと遺伝子が導入される場所によって遺伝子発現のしやすさが変わってくることが良く見られる。個体数を増やせば、確率的に遺伝子発現が促進されている個体を得る確率も上がる。 E. tirucalliの形質転換法の開発であるが、形質転換の難易度は使う植物による。通常、野菜などのように生育の早いものは、カルス化が早く再分化も容易である。一方でE. tirucalliは生育が遅く細胞分裂速度も遅いと考えられることから、再分化が難しいものと思われる。形質転換法が確立できればそれにこしたことはないが、SE阻害剤であるterbinafineの有効性等も含めて検討していく必要があると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究方針であるが、形質転換トマトの葉及び果実からRNAを調製し、SEの発現抑制が行われているか、EtSSの過剰発現が行われているかを確認する。EtSSに関してはペプチド抗体を作製してあるので、抗体の特異性がみられるか確認する。特異性が見られるならば、トマトの葉及び果実から粗タンパク質を調製し、ウェスタンブロット解析を行うことで、トマトにおけるタンパク質の生成量を調べる。また、トマト果実をクロロホルム・メタノール混合液で抽出し、NaClを加えた後で有機層を回収し、真空エバポレータで乾燥をする。乾燥を行ったあとにクロロホルムを加えて融解して、シリカゲルを用いて画分を行う。画分後、ガスクロマトグラフィでスクアレンの検出を行う。今回、通常のトマトにてEtSS過剰発現及びSlSE発現抑制を行っているので、形質転換植物の核相(形質転換をすると4倍体ができることがある)をフローサイトメーターで調べて、2倍体を選抜する。この形質転換体とghost-like変異体を掛け合わせを行うことで、スクアレン生合成の前駆物質であるファルネシル二リン酸の供給量を増やして、より多くのスクアレンを蓄積する植物体を作出することを方針とする。 E.tirucalliの形質転換法であるが、滅菌済の植物体は多く用意してあるので、1cm長の茎を多く用意して不定芽の作製を行う。その不定芽に関して再分化が行われるよう、サイトカイニンの種類やオーキシンの種類を検討する。また、SE阻害剤であるterbinafineを投与することでE.tirucalli乳液中のスクアレン含量が上昇するかを調べる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額1,348,000円については、消耗品費700,000円、人件費500,000円、旅費100,000円、その他48,000円の使用予定である。消耗品としては分子生物学試薬、酵素類の購入に充てる。また技術補佐員の雇用を行っていることから人件費として計上する。学会等での発表のため旅費に、各種センター使用量としてその他に計上する。
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