2012 Fiscal Year Research-status Report
動物細胞内での遺伝子増幅速度を支配する分子機構と、その活用
Project/Area Number |
24658290
|
Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
清水 典明 広島大学, 生物圏科学研究科, 教授 (10216096)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
|
Keywords | 遺伝子増幅 / 蛋白質生産 / ゲノム不安定性 / 複製開始 / 染色体外遺伝因子 |
Research Abstract |
(課題A) 我々が独自に見いだして蛋白質生産へと応用させてきたIR/MAR遺伝子増幅法は、既存のDHFR/Mtx方とは原理的に全く異なることから、その2つの方法を融合した方法(IR/MAR-Mtx融合法)について検討した。増幅の経時変化をFISH法により詳細に検討した結果、IR/MAR配列を含む融合法では、DHFR/MTx単独法に比較して、1)最初に染色体外で多量体化するステップが効率的に進行すること、2)それが染色体腕に組み込まれることにより、比較的大きな増幅構造が初期に生じること、3)MTx処理によりそのような染色体腕の構造からFine Ladder構造が一気に生じること、4)結果として、IR/MAR配列があることにより、細胞増殖にともなって安定である増幅構造が、早期に形成されることが示された。(課題B)遺伝子増幅構造を加速させる配列を、beta-globin遺伝子座のIR配列(2.7 kbp)から0.5 kbpまで絞り込むことに成功した。そのような配列は、長大で均質なHSRを形成するCOLO 320DM細胞で評価・絞り込んだが、同じ配列が、Fine ladder HSRを形成するCHO DG44細胞でも同様に遺伝子増幅を加速したことから、このような配列は染色体外での多量体化ステップで機能することが示唆された。絞り込まれた配列には、AT-rich, potential MAR, AG-richの3種類の配列要素が含まれ、染色体内での複製開始に関する先行論文と比較することにより、AG-richが染色体外での複製開始に必要であることが示唆された。(課題C)計画書に記載のように、ヒトゲノム中から増幅した構造を安定化する/発現を高める配列を単離することを行っている。現在までに、候補配列を数種類絞り込み、その配列についてより詳細な検討を行っている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(課題A) IR/MAR-Mtx融合法について、増幅の経時変化をFISH法により詳細に検討した結果、増幅構造の形成過程について、上記のような実績を生むことが出来た。このことは、IR/MAR配列によりなぜ、DHFR/Mtx法に比べて安定で遺伝子発現の高い構造を早期に形成できるかを説明するものであり、極めて重要な成果である。計画書に記載の他の検討項目についても、検討を行いつつあり、成果が得られてきている。(課題B)遺伝子増幅構造を加速させる配列を、beta-globin遺伝子座のIR配列から0.5 kbpまで絞り込み、その性状に関して上記の成果が得られた。これは、遺伝子増幅の機構、その応用としての蛋白質生産、に関して重要であるばかりでなく、動物細胞での複製開始、特に今まで全く解明されていなかった染色体外での複製開始、に関して重要な寄与をすることが出来た。(課題C)計画書に記載のように研究を精力的に進めつつあり、1年間の達成度としては順調であると言える。
|
Strategy for Future Research Activity |
(課題A)経時変化による解析を、クローンレベルで行い、より明確な成果としてまとめる。計画書に記載した、アナフェーズブリッジの形成、組換え配列の形成、複製タイミング、クロマチン修飾状況、について、初年度に行った成果をもとに、詳細な検討を行って明確な理解を得る。(課題B)初年度までに重要な成果が得られたので、投稿論文にまとめて刊行する。(課題C)初年度の研究を引き続き発展させるとともに、初年度に明らかになった方法上の問題点を克服する形で検討を行うことで、目的とする配列を入手し、活用する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
大半は消耗品として使用する。これは、申請者が主宰する研究室で申請者と大学院生が実験をし、本研究計画を強力に推進するために必要な経費である。周知のように、哺乳動物培養細胞を用いた分子細胞生物学の実験には多額の消耗品が必要である。その他に、旅費は情報収集と研究成果の発表、等に必要である。
|