2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24659009
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
畑山 範 長崎大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (20143000)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 有機触媒 / 酸ー塩基複合型触媒 / 不斉反応 / キニーネ / α-イソクプレイン / β-イソクプレイジン |
Research Abstract |
β-イソクプレイジン(β-ICD)は森田-Baylis-Hillman(MBH)反応をはじめ様々な不斉反応に用いられている有機触媒である。しかし、この触媒はキニジンから容易に得られるものの、そのエナンチオマーの合成は困難であり、反応生成物の両エナンチオマーの獲得という点において大きな欠点となっていた。本研究は、これまで開発されて来たβ-ICDを触媒とする反応を真に実用的な不斉反応として確立すべく、β-ICDと相補的な関係にある新たな有機触媒を開発することを目的としている。また、その触媒反応を活用し、例えば、新たな抗癌剤開発のリードとして期待されるHDAC阻害活性天然物burkholdac A等の合成にも挑戦し、有機合成化学的有用性を示すことを目的とする。24年度の研究においては、キニーネと超強酸との反応を詳細に検討した。その結果、トリフルオロメタンスルホン酸との反応において、室温では骨格転位のみが進行しα-イソキニーネのみが得られ、加温すると脱メチル化も進行しα-イソクプレインが高収率で得られることを見出した。このもののX線結晶構造解析とNOESYスペクトル解析によって、β-ICDと類似した環状エーテルを含む堅固なかご形構造に加え、フェノール性OHとキヌクリジンNがお互いに向き合った構造的特徴を持つことがわかった。続いて、α-イソクプレインがβ-ICDとエナンチオメリックな関係にある不斉反応場を形成し得る点に着目し、その触媒活性をMBH反応を指標に調べた。その結果、芳香族アルデヒドおよび脂肪族アルデヒドのいずれにおいても、中程度から良好な収率で87% eeから90% eeのS体が生成することを見出した。このことより、α-イソクプレインはR体の生成に導くβ-ICDに対してエナンチオ相補的な触媒として機能することを明らかにできた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の目標に設定したβ-イソクプレイジンと相補的な関係にある新たな有機触媒の開発については、最終年度を前に既にα-イソクプレインを見出し、キニーネからの効率的な1段階合成法も確立できた。さらに、このものを有機触媒とする不斉森田-Baylis-Hillman反応を詳細に検討し、α-イソクプレインがβ-イソクプレイジンと反対のエナンチオ選択性を示すことを見出すことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでのところ、研究計画の変更は特にない。前年度で開発したα-イソクプレインを触媒として用い、アザ森田-Baylis-Hillman反応等の他の不斉反応への適用性を調べる。また、α-イソクプレインの誘導体化による他の触媒の合成も検討する。一方、α-イソクプレインを用いる不斉反応に基づく生物活性天然物の合成を行い、開発した触媒反応の有機合成化学的有用性を示す計画である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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