2012 Fiscal Year Research-status Report
P糖タンパク質の生体内分子イメージング剤の立体構造に基づいた最適化
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24659018
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
加藤 博章 京都大学, 薬学研究科(研究院), 教授 (90204487)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 分子イメージング / ABCトランスポーター / X線結晶解析 / P糖タンパク質 / 抗がん剤 |
Research Abstract |
1.標的ABC トランスポーターと分子プローブ候補化合物との複合体の結晶化:メタノール資化性酵母Pichia pastoris を用いて結晶化に必要な大量のABCトランスポーター(CmABCB1)を調製し、His-tag を利用した2 段階の操作で精製した。その膜タンパク質試料を用いて各種分子プローブとの複合体の結晶化を実施した。その結果、X線結晶構造解析に適した良質の結晶が得られた。 2.同複合体のX 線結晶解析:得られた結晶を用いて、実験室のX 線装置を用いて結晶の選抜を行い、解析に適した結晶は、SPring-8 の高輝度X 線を用いて解析を実施した。位相問題は、すでに解析済の構造を基に分子置換法を用いて解くことができた。しかし、解析の結果、トランスポータータンパク質のモデルを構築することはできたが、分子プローブの電子密度は不鮮明であり、分子プローブのモデルを当てはめることはできなかった。 3.立体構造に基づいた分子プローブ構造設計指針の解明:立体構造は解析できたが、分子プローブの結合部位は今のところ不明であることから、分子プローブの結合メカニズムについて、酵素反応速度論的な解析を行った。その結果、輸送基質と同等の結合定数を示すことが判明した。 4.Lipidic Mesophase 法とBicelle 法による高分解能結晶の調製への挑戦:GPCR の結晶化などで成功しているLipidic Mesophase 法をABCトランスポーターの特徴に合わせて改良を試みた。ただし、これまでのところ結晶を得るには至っていない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
極めて難易度の高い膜タンパク質の結晶を調製することに成功し、その立体構造をX線結晶解析を用いて決定することもできた。これにより、結晶構造解析を利用して、分子プローブ候補化合物との相互作用を解析するための手法が確立できた。しかしながら、分子プローブとしての候補化合物については、それら化合物が結晶中に含まれていることは確認できたが、結晶解析の電子密度が不鮮明であったため、その立体構造を確定するにはいたらなかった。このことは、ABC多剤排出トランスポーターの基質結合の仕組みが、酵素とは異なる多様性を示すことと本質的な関係にあると考えられ、その問題解決が今後の研究のカギとなることが判明した。そこで、この問題を明らかにするために、今後は、分子プローブの候補化合物の改良と、ABCトランスポーターの改変の両方向からアプローチを行う計画である。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の目的通り、分子プローブの候補化合物をその受容体膜タンパク質との複合体の結晶構造に基づいて改良を加えるための解析システムを構築することができた。しかし、現状の候補化合物では、結晶内部において、均一な立体構造を取っていない可能性が示唆されたことから、その問題を解決することが新たに必要となって来た。そこで、分子プローブ候補化合物と受容体タンパク質との相互作用を増強するために、共有結合を導入することや、受容体へのタンパク質工学的な改変を加えることを実施することにより、問題の解決を図る計画である。さらに、どうしても結晶中での電子密度が改善されなかったときへの対策として、ドッキングシミュレーションによる化合物の結合部位の推定も実施する計画として万全を期す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初計画では、予想外の問題が生じたことから、その対策として、分子プローブ候補化合物と受容体膜タンパク質との共有結合の導入実験、および、コンピューターによるドッキングシミュレーションを実施することが必要となった。そこで、当該研究費をこれらへの対策に充てることにより、予定通りの計画遂行に勤める予定である。
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